第525話 なぜこうなった!?

 あれやこれやとやっていたら、三泊もしてしまった。


 殿様らとの話し合いや浮遊島の観光。なかなか楽しゅうございました。


「さて。魔王退治でもしますかね」


 我が家に帰り、お茶を飲みながら浮遊島のお土産話を家族に披露し、そろそろお昼の用意をしなくちゃならん時間で切り上げた。


「はぁ? なんだ、突然?」


 親父殿らが不思議そうな顔をしていたが、構わずカイナを見る。


「あ、おれ、用があったんだ。じゃ――」


 即行逃げる腐れ魔王。フフ。イイ判断だ。


「チャコ。弾出る武器があったらくんねーか?」


 しばらく訓練期間とか言ってた、バイオレンスな花人さんにお願いした。


「……え、えーと、なら、これでいいかな?」


 なにもない空間から未来的なライフル銃を出した。


 銃に興味がないオレにはよーわからんが、弾が出るのならなんでもイイわ。朧もあるしな。


「勇者ちゃん用ももらえるか?」


「え、ええ。構わないけど、なんなら手伝おうか?」


「それは助かる。あの腐れ、そうゆうの得意そうだしよ」


「フフ。任せなさい。あたし、FPSも得意だから」


 FPSがなんなのか知らんが、チャコ、そう言うの得意そうだし、心強いわ。


「なら、イント・フィーブンでいきますか。あの人、メタル系とか好きそうだし」


 なんかよーわからん単語が出てるか、マニアはそんなもの。気にするなだ。


「じゃあ、参加する人は集まって」


 と、なんかよくわからないが遊ぶんだろうと理解した勇者ちゃんが真っ先に駆け寄り、ガブの頭に咲いていた誰かさんが人化して参加。他は誰もこなかった。


 つーか、こちらなど見えないかのようにいつもの生活に戻っていた。うちの家族、ごーいんぐまいうぇ~い!


「ほら、武器の説明するわよ!」


 なにか主導権とか主旨がズレたような気がしないでもないが、ここは流れに流されておこう。これはたぶん、手段は問わないって状況だ。


「こんなもんね。わかった?」


「うん、わかったー!」


 高スペックな勇者ちゃん。銃を我がものにしちゃいました。


「簡単ね」


 誰かさんは銃を武器にしているからな、そりゃ簡単だろうよ。


「ベー、わかった?」


「ああ」


 これでも男の子。銃の一つや二つ、使えるわ!


 あ、でも、これがこうしてこうだったよな? あれ? あ、こうか。だ、大丈夫。理解した。


「なら、狩りを始めますか」


 いつの間にかどこかの特殊部隊の格好になったチャコに誰かさんに勇者ちゃん。オレは?


 なにか疎外感を感じますが、それはこれ。あれはこれだ。気にしたら負けだ。


 もう完全に主導権がチャコに移ったようで、誰かさんと勇者ちゃんを従えて食堂を出て行こうとした。


「チャコ。ダメだ」


 ドアを開けようとしたチャコの手が寸前で止まった。


 自分で言っててなんだが、よくわかったな。さすがバイオレンス花人。


「チッ。あたしとしたことが。カナコ。アタックよ」


「任せなさい」


 両手に拳銃を構え、なんか男前に笑う誰――カナコさんとやら。さすがチャコといるだけはある。


 ドアの隙間から、髪のような花びらのようなものを差した。なにやってんの?


「……武装したメイドが二人いるわ」


 はい?


「ふふ。さすがね。けどまあ、想定内よ」


 え、なにが?


「やれる?」


「誰に言ってるのよ」


 ニヒルに笑うチャコに、ニヒルに笑い返すカナコさんとやら。なんかもうお腹いっぱいになってきたんですけど……。


「ゴーアタックゴーでやるわよ」


「了解!」


「任せて!」


 ごめん。その前にゴーアタックゴーってなによ? つーか、なんで勇者ちゃんが理解してんの? なんかもういろいろと説明ぷりーずだよ。


 指でカウントダウンするチャコ。ゼロになって飛び出すカナコさんとやら。そして、銃撃戦が始まった。


「いくわよ!」


「おー!」


 チャコと勇者ちゃんが参戦。更に激しい銃撃戦が行われた。


 完全に出遅れたオレは茫然するだけ。どーしろって言うんだよ!


 助けを求めるべく家族に目を向けるが、誰も目を合わせてくれなかった。マイスイートエンジェルサプルちゃん以外は。


「あんちゃん。あんまり汚さないでね」


「イエスサー!」


 エンジェルスマイルに敬礼。踵を返し戦場へと飛び出した。


 我が家の家事将軍の命令は絶対。そして、多少の汚れは許された。


 ライフル銃を構えて廊下に出ると、武装したダークエルフのメイドさんが二人、床に倒れていた。なんか、死亡と書かれた紙を持って。


「なかなかやるわね、あなたたち」


 カナコさんとやらがダークエルフのメイドさんらの健闘を讃えてます。


「恐縮です」


 えーと、これ、なんて友情映画?


「ベー。獲物は?」


「え、あ、地下、保存庫に」


 あ、我が家にはヘキサゴン結界を敷いているのでわかるんですよ。自分、我が家の警備主任なもんで。


「つまり、誘い込みね。やるじゃない」


「敵に不足なしよ」


「おー!」


 チャコの中でカイナの株が急上昇。オレの中でテメーらの株が急降下だよ。


「フフ。どちらが狩られているか教えてあげるわ」


 ハイ、もはや主旨が完全に反れました。軌道修正不可です。


「ゴーゴーヘブンでいくわよ」


「フフ。それ、おもしろそうね。了解よ」


「ゴーゴゴー!」


 ごめん。オレ、もう止めてイイかな?

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