第414話 伸縮能力でイイのか、これ?
「うおっ! なんだこりゃっ!?」
地下六階。飛空船ドックに着き、結界エレベーターの扉が開いたら、そこが街になっていた。
ここに来るのは五日ぶりだが、たった五日で変わり過ぎだろう。つーか、小人族、いっぱいいんなっ!
「これはまた、凄いことになってますね」
「へ~。小人族なんて初めて見たよ。ん? あれは飛空船かい?」
そのまま結界エレベーターを出ようとするカブキねーちゃんの服をつかんで引き止めた。
「小人たちを踏み潰す気か」
こんなところで大量虐殺なんて止めてくれよ。
「おっと。そうだったね。飛空船に興奮して忘れちゃったよ」
「まったく、あなたはいつまで経ってもおっちょこちょいが直りませんね」
幾ら派手でも師匠からしたらカブキねーちゃんも未熟者。完全に子供扱いであった。
「ハイハイ、すみませんでした」
フフ。カブキねーちゃんもまだまだ師匠には頭が上がらないよーだ。
「親方。ちょっと待っててくれや」
小人の街へ入れるように自分の体を小さくしていく。
結界エレベーターの開閉でオレたちに気が付いたようで、小人たちが集まり、遠巻きにこちらを見ていた。
さて、どうするかなと考えていたら、遠巻きに見ていた群衆の中から衛兵らしい格好をした一団が現れた。
「ようこそお出でくださいました! 第十七連隊アルバック中隊、中隊長のハイルーク大尉です!」
まあ、正確には大尉ではなくウォーグと言ってるんだが、なんか前世の軍隊に似てるので、大尉とか少尉とかに置き換えて脳内で自動変換してるだけです。
「殿様はいるかい?」
「申し訳ありません。閣下は都市島に行っておりまして、只今留守にしております」
もう来たんかい。やること早いな。
「わかった。そんで、殿様から伝言なんかはあるかい?」
できる殿様。なんかあれば伝えておくくらいする頭は回る人なんで、一応、聞いてみた。
「はい。ベー様が来たら食糧をお願いしろと命令を受けております!」
「食糧ね。まあ、こんだけいれば足りなくなるか」
二、三万はいるんだ、持ってこれる食糧にも限界があるだろうさ。
「わかった。取り合えず海竜の肉と小麦、塩や砂糖なんかを適当に置いて行く。足りなくなったらまた言ってくれと伝えてくれ」
「畏まりました!」
大尉さんたちに群衆を下がらせるように伝え、オレは元のサイズに戻った。
収納鞄から鳥を何羽か取り出し、一メートルサイズに大きくした。ってか、これだけで場所をとっちまったな……。
また小さくなり、大尉に来てもらう。
「なんでしょうか?」
「あそこの一番とか二番って書いてあるとこ、倉庫なんだが、あそこにも住んでるのか?」
資材倉庫として創ったところだから、結構広くなってるんだよ。
「いえ、扉を開くことができなかったので、中には入っておりません」
あ、そー言や、あそこ鍵つけてたっけ。結界で。忘れてたわ。
「んじゃ、あそこに残りを出すから、あとはそっちでなんとかしてくれや」
言って一番倉庫へと向かい、結界を解除。扉を開いた。
小さくなっても五トンのものを持っても平気な体なんか。ん? ってことは、大きくなっても五トンのものを持って平気な体のまま、ってことか?
なにやら悪意(介入)を感じるが、三分間巨大ヒーローになるつもりはねーので問題ナッシングー。と、気にせず一番倉庫へ入った。
また元のサイズに戻り、小売り用の小麦粉が入った袋を取り出し、フレコン(フレキシブルコンテナの略で一トン入るもの)くらいまで大きくした。
小分けにした塩、砂糖、ゴジルと言った香辛料各種、野菜各種、果物各種、酒、お茶、乾燥魚介類、油などを出していく。
「こんなもんかな?」
収納鞄に小分けにして入れておいたものを全て出してみた。もちろん、大きくさせてな。
またまた小さくなり、大尉を呼んだ。
「不便だろうが、これでなんとかしてくれと、殿様に伝えてくれ。あと、この上に人を住まわすから、暇ができたら挨拶にでもいってくれとも頼むわ」
「はい、畏まりました!」
んじゃなと挨拶して結界エレベーターへ戻った。
「ふぅ~。デカくなったり小さくなったりしてると、自分の大きさがわからなくなるな」
自分の身長、どっかに記しておかねーと、なんか体のバランス悪くしそうだぜ。
「……なるほど。確かにご老体どのがベーを一目も二目もおくわけです。まったく持って非常識ですね……」
「前言撤回。村人騙ってんじゃないよ!」
なにやら非難と否定がゴーゴーです。
人外とカブキ者に言われる筋合いじゃねーと思うんだが、自分の中でもこの伸縮能力……ってか、伸び縮みでイイのか? いやまあ、なんでもイイんだが、さすがに都合よすぎだろうと思う気持ちがある。
なんで、親方とカブキねーちゃんの非難と否定を素直に受け止めた。
「だが、村人は譲らぬ!」
だが断る! 的に言ってみたが、ネタを知らない人にはチンプンカンプン。『こいつアホや』と見られるのがオチ。気をつけようね。
だが、オレは負けぬ!
とか心の中で宣言し、でも、背中で泣いて上へと参りまーす。
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