第401話 大親友
公爵どのを迎える、とは言っても帝国の重鎮であり、ここまでくるのは飛空船なために、どうするかを決めるとかで、親父さんと公爵どのが冒険商人ギルド商館へとでかけた。
残ったオレは、息を吹き返したプリッつあんとドレミの食事風景を眺めながら、お代わりしたアイスコーヒーを飲んでいた。
「なんか、微妙な味よね、この料理」
最後の人参のようなものを食したプリッつあんが、Aランチ(トースト二枚。野菜入りスクランブルエッグ。ソーセージ二本。コンソメ風のスープです)の味を評した。
すっかりうちのルールに染まったプリッつあんは、微妙な、とは言いながらも残さず食べていた。
あと、ちなみにだが、Aランチは、プリッつあんサイズに小さくしております。これもちなみにだが、ドレミはBランチ(ホットドッグと鳥肉と野菜を炒めたもの。グラタンっぽいものです)を口から……食ってはいるが、骨格を無視した食い方を、まあ、飲み込んでるって感じだよ……。
「そうか? 旨かったけどな」
ヘルシーな味でイイと思うぞ、オレは。
「う~ん。不味くはないんだけど、やっぱりサプルの味には劣るかな~」
「サプルの味を基準にしたら、他の料理が可哀想だよ」
あれはもう前世の料理にも勝ってる。あの味を覚えたら今生の料理なんて病院食より味気ねーさ。
「ふふ。すまないね。料理は不得意なんで」
向いの席にグレン婆が忽然と現れた。が、もう慣れたよ。
「相変わらず、だな」
「こればっかりは直らないね」
「ふふ。オレも料理はダメで、妹から台所出禁になったよ」
「ふふ。それは賢明だね」
グレン婆のしわくちゃな笑いに、こちらも笑いで返した。
「──お、ベーか。いらっしゃい」
と、ご隠居さんか現れた。
その一瞬の間にグレン婆は消えていたが、これと言った未練はねー。気にせずご隠居さんに意識を向けた。
「おう。お邪魔してるよ」
「ベーならいつでも歓迎するさね。で、今日はどうしたい?」
向いの席に座ったご隠居さんは、居候さんにお茶を頼んだ。
「いやなに、顔の広いご隠居さんにちょっと頼みをね」
と言うと、なにやら身構えるご隠居さん。なんでだよ?
「お前さんの頼みは、油断ならんからな」
「オレ、そんな無茶な頼みなんてしてねーぞ」
つーか、頼み事、これが初めてだよね。
「お前さんの行動、考え、全てが無茶ぶりだからな。数日前、王都を灰にしようとしたバカだからな、お前さんは」
「勇者の活躍に万歳、だな」
「ったく。どの口が言うさね……」
結果よければ全てよし。それでイイじゃん。
「はぁ~。で、なんさね?」
「土木に強い人外さん、紹介してくんねーかな? できれば移住してくれる人外さんをよ」
「また、無茶苦茶なことやってる訳か。なにしてるさね?」
「地下国家造りと小人族の住み家造り。港の改造に海中都市造り。それと、町造りかな? あ、そうそう。飛空船とかの技術に長けたヤツか飛空船の船長になって商売したいヤツもいたら頼むわ。給料、報酬は要相談だな。人外さんの給料単価、よー知らんしよ。どうかな?」
返ってきたのは沈黙と頭を押さえるご隠居さんだった。どうしたと?
「……ほんと、お前さんは期待以上の無茶苦茶してくれんな……」
「フフ。魔王さまもベーの前では小物ね。はい、どうぞ」
「うるさい。甘いものに魂を売った堕天使が! あっちいけ」
「ハイハイ。あ、ベー。農作業をやりたいって子がいるんだけど、あなたの村か、その地下国家に移住させてくれないかしら? 土地は狭くても構わないから」
農作業をやりたい人外さん、ね。
「農作業やってくれんなら大歓迎さ。土地は好きなだけ使えばイイさ。土地はいっぱいあっからな。とは言っても、まだ創りかけだから開墾からになるぜ」
まあ、第一層階なら直ぐに創れるし、人外さんなら環境悪くてもなんとかしてくれんだろう。
「それなら大丈夫よ。一から始めたいって言ってたしね」
田舎でスローライフを、な人外さんのようだ。
「わかったよ。まったく!」
と、ご隠居さんがヤケクソ気味に叫んだ。
「何人かいるから聞いてきてやる。夕方、またくるさね!」
「さすがご隠居さん。頼りになる~」
とりあえず、よいしょしておく。
なにか言いたそうだったが、無理矢理飲み込んで店を出ていってしまった。
「ここで待つ?」
居候さんの提案に首を振った。
「いや、買い物頼まれてるからな、それを済ませてくるよ。ご馳走さんな」
金を払い、オレたちも店を出た。
さて。まずは親方んとこにいきますか。ニヒヒ。
「まったく、からかう気まんまんな顔して。ジーゴに嫌われるわよ」
「そんときは、プリッつあんが仲持ってくれや」
ジーゴの大親友、プリッつあん。
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