第399話 Cランチ二つ入りまーす!

 ぴっぽっぱっぴっ。


 プルプルプル~。プルプルプル~。ガチャ。


「――あ、もしもしオレオレ。今大丈夫?」


 なんて久しぶりに携帯電話 (もちろん、前世の携帯電話じゃなく、アニメな世界のとんでも通信機ですよ)を使ったが、意外とすんなり使えるもんだ。びっくり。


「……オレオレ詐欺は間に合ってます」


 ブチ。ツーツーツー。


 ぴっぽっぱっぴっ。


 プルプルプル~。プルプルプル~。ガチャ。


「すみません。ベーと申します。親父さん……あれ? 親父さん、名前なんったっけ?」


 ヤベー! 親父さんの名前、忘れっちまったよ!


「……どうやら本物のベーのようだな」


「つーか、なんでオレオレ詐欺知ってんだよ!」


 なんかいろいろ突っ込みてーが、まずオレオレ詐欺が気になるわ!


「いや、タケルがオレオレ詐欺には注意しろと言ってたもんでな」


「かかってくんのかい!」


 今生最大のびっくりだわ!


「冗談だよ。じゃぱにーずじょーく? だってよ」


「ねーよ、そんなもん!」


 あったらタケルは別世界のじゃぱにーずだわ!


 クソ! なかなか愉快なことしてくれんな、タケルのヤツ。まさに今生最大の突っ込みしちまったよ!


「なに怒ってんだ? たんなる冗談だろう」


「いや、怒ってんじゃねーよ。そんなもんを華麗に、且つ、鮮やかに使ってる親父さんに驚いてんたよ。その通信機、十台しかねーんじゃなかったっけ?」


 アニメな世界の通信機とは言え、通信できる距離は三十キロ(中継局を置けば幾らでも大丈夫とかは言ってたがよ)と言っていた。そんな狭い範囲で使うことなんかねーだろう?


「ああ。だが、結構、どころか、便利過ぎてもはやこれなしでは生きて行けないくらいだな」


 ファンタジーの住人のクセして女子高生みたいなこと言ってんじゃねーよ、まったくよー!


「それで、なんだ? と言うか、王都にいるのか?」


「まーな。ちょっと用があってきたんだよ。今さらだが、今、大丈夫なのか?」


「ああ、ちょっと船の都合がついたんでな、今、アブリクト島で使う資材を積み込んでいるところだ」


 お、船借りられたんだ。そりゃ重畳だ。


「そうか。そりゃ好都合。ワリーが誰か一人、こっちに寄越してくんねーかな? アブリクト貿易連盟を見せたいヤツがいるんでよ。えーと、ここはなんて住所だったっけな?」


 なんか住所が書いてあるもんねーかなと、あちらこちらに目を走らせるが、これと言ったものはなかった。チッ。不便だな、まったくよ。


「あー、えーと、あ、親父さん、グレン婆さんの心地好い一時って店、知ってるか?」


「ああ。港の者なら知らない者はいないと言うくらい有名だからな。おれも何度かいってるさ」


 へー、そうなんだ。


 なんとなく店に目を向けたら確かに今も店に入って行く客が何人も見えた。


「なら、そこに誰か一人、寄越してくれや」


「わかった。あ、ちなみに、誰なんだ?」


「帝国の公爵だよ」


 と、答えたら沈黙が返って来た。どったの?


「もしもし、親父さん? 生きてる?」


 発作で倒れたか?


「……ほんと、今までにないくらいふざけやがって、こん畜生が!」


「え、なぜにいきなりの罵倒?」


 意味わからんわ。


「わかったすぐいく――」


 と、通信が切れてしまった。なんだよいったい?


「うん。お前が悪い」


「え、なにが!?」


 なんの決めつけだよ!


「まったく、気の毒な御仁だ――が、なるほど、アバールか。確かに彼の者しかいないか、世界貿易ギルドのマスターは」


 なにやら公爵どのの頭の中で納得が行われたようで、うんうん頷いていた。


「なんかよー知らんが、案内が来るまで店で待とうぜ」


 公爵どのを促してグレン婆さんの心地好い一時へとお邪魔しますっと。


「あら、いらっしゃい。よく来たわね」


 今日も今日とてウェイトレスしてる居候さん。この魔女さん、なにを目的に生きてんだ?


「おう。ちょっと人と約束してな、来るまで休ませてもらうわ」


「どうぞ。ゆっくりしていって。なにか注文する?」


 そー言や、ここでなんか頼んだことねーな。なにあんだ?


 席へと案内され、メニューを見る。


「まんま喫茶店だな」


 書かれているのはサンドイッチやらホットケーキと言った軽食ものから果汁やこの近隣で飲まれてるお茶、白茶までありやがる。これで王都に広まってないってどーゆーことよ?


「ベー。きっさてん、とはなんだ?」


「まあ、簡単に言えば食い物屋だな」


 喫茶店の定義なんて知らんが、間違ってはいねーだろう。


「簡単に言いすぎよ。でもまあ、グレンの話では喫茶店を真似たとか言ってたけどね」


「……そっか……」


 そう言や、そんなこと言ってたっけな……。


「なんだ、いきなり笑い出して?」


「いや、ちょっと昔のことを思い出してな。あ、居候さん。オレ、Cランチとアイスコーヒーな。公爵どの、なんか嫌いなものはあるか?」


「いや、これと言ったものはないな」


 まあ、よく食う人だもんな。


「なら、Cランチをもう一つ。あと、葡萄酒を一本頼むわ」


 ちなみにCランチは、トースト二枚となんかの肉のステーキ。数種の温野菜とスパゲッティが添えられている。あと、サラダとスープがついてます。


「ハーイ、Cランチ二つ入りまーす!」


 なんと言うか、なに世界のなに設定だよと突っ込んだら負けかな?

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