第398話 他人任せの平和は旨いか?
さて。人外さんのとこにいく前に、この海竜(食材)をなんとかせんとな。
「まあ、小さくすればイイんだがな」
プリッつあんの能力、マジサイコー!
だいたい二センチくらいまで縮めて収納鞄に詰めていく。で、保存庫空きましたー!
「……もう、なんでもありになってきたな、お前……」
別になんでもありではねーが、なんとかしちゃったんだから、なんとも言えねーな。うん。
「海竜、どうするので?」
「食糧にするさ。海竜のステーキ、旨いからな」
そのまま焼いただけでは固いが、パロンと言う酸味のある果物に一晩浸けて、生姜 (ぽいものな)ベースのソースを掛けて焼くと、スゲー柔らかいステーキになるのだ。
「あー、アレな。確かに旨かったな。でも、パロンって、秋になるやつだろう?」
あ、そー言や、あんちゃんにも出したっけな。
「そこはそれ。プリッつあんの能力に掛かれば造作もねーさ。瓶一本あれば増やし放題だからな」
まあ、パロンは大量にあるし、絞り汁も二百以上はある。なんら問題ねーさ。
「んじゃ、また貯めろ、と言いてーところだが、乱獲は止めろ。この一帯の海から海竜いなくなるわ! ってことをウルさんに言ってくれ、あんちゃん。生きてりゃ魚でも貝でも構わねーからよ」
生態系が狂ったら、海のもんが食えなくなる。豊かな海だからこそ自重はせんとな。
「わ、わかった。言っておくよ」
「それとバンベル。バカやるなとは言わねーし、言える資格もオレにはねーが、まずは自分の住み家に力を注げと言っとけ。力を貸すとは言ったが、なにもしねーヤツに力を貸すなんてことしねーからな。よく言っとけ!」
「はい。全力で言っておきます」
なにやらバンベルさんから黒いオーラが……あ、うん。オレ見てねー。オレ知らねー。さぁあ、王都にいかなくちゃ~。
サラっとその場を離れて転移の間に向かった。のだが、なぜか公爵どのと大老どのがついてきた。なんだい?
「いや、王都にいくんだろう。だったら一緒に頼む。孫や友人に挨拶しておきたいからな」
「おれは、暇潰しだな。やることないしよ」
ほんと、自由な人らだよ。
「まあ、好きにしな。二人増えたところで手間はねーしな」
転移は空間ごと。三十人くらいまでなら問題ナッシング。
で、サクっと転移。王都に到着です。
「ここは?」
「王都でのオレの拠点だな。まあ、今は転移するためだけの場所だがよ」
あ、そー言や、サリバリに王都で理髪店やらねーか聞くのすっかり忘れてたわ。まあ、また忘れそうだがよ。
「んじゃ、大老どのはここでお別れな。また好きなときにこいや」
自由人に予定を聞くのは無粋ってもの。会えるときは会えるし、会えねーときは会えねー。そんな感じでいれば、再会もまた、楽しいだ。
「おう。好きなときにいくよ」
あっさりと別れ、街の中に消えていく大老どの。またな。
「公爵どのは、どうする?」
「んー、そうだな。初めてのところだし、なにかお勧めなところはあるか?」
お勧め、ね。
「なら、アブリクト貿易連盟でも見てくるか?」
「連盟? 世界貿易ギルドとは違うのか?」
そう聞くってことは、あんちゃんからは聞いているようだな。
「まあ、それほど違いはねーんだが、アブリクトの方はこの近隣の間で貿易する謂わば海運都市で、世界貿易ギルドは、種族民族関係なしの世界を相手にしたギルドだな。まあ、本拠地が異種族国家にあるから、アブリクトは隠れ蓑さ」
それに、まだ会員数も物もまだまだ足りてねー。だから、アブリクト貿易連盟は、世界貿易ギルドを補ってもらうためのものてもあるのだ。
「随分と壮大なことやってるな、お前は……」
「平和ってのは大規模でねーと成り立たないからな」
違う大陸ならまだしも同じ大陸で戦争してんのに、うちには関係ございませんとか言える神経が平和だわ。
平和を求めるなら近隣の国を、種族を巻き込まなければならない。そのための足掛かりとしてのアブリクト貿易連盟であり、世界貿易ギルドである。
……まあ、がんばるのはオレじゃねーけどな……。
他人任せの平和は旨いか? ハイ、メシウマですがなにか?
「なんで、 よく見てから考えな」
どちらに入る入らねーじゃなくて、帝国はどう動けばイイのかをな。
「……まったく、お前が賢いだけだったら無理矢理でも拐っていくのだがな……」
まあ、無理矢理拐われたら無理矢理帰って来るだけだがな。
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