第348話 陰謀か?!
大・宴・会!
に、なぜかなりました。
日本酒が大好きなカイナと、日本酒にはまった東大陸の出身者が飲むわ飲むわのうわばみカーニバル。
なに言ってるかオレにもわからんが、乾杯からもうはっちゃけて、どうしようもなくなったのだ。
酔っ払ったチャンターさんと剣客さんに無理矢理飲まされたが、我が結界があれば一万リットル飲もうが平気である。まあ、出すのはモザイク処理が必要だけどな。
「カイナ。今日はここに泊まってけ。また明日くるからよ」
魔王な体だけあって一升瓶十七本空けてもまだ飲むペースを落とさないカイナに言った。
「うん。わかった」
「ベー殿、お帰りか?」
飲む量はカイナに劣るものの、剣客さんも表情に余裕があり、まだ意識を保っていた。
「ああ。先に帰るわ」
「では、某も──」
「イイよ。せっかくの出会いの酒なんだ、倒れるまで飲めや。楽しみを後にすんな。今を楽しめ」
またカイナの表情が哀愁を帯びるが、もう勝手に妄想してくださいだ。
「じゃあ、また明日な」
言ってじいさんの酒場を出た。
ちなみにプリッつあんは茶碗一杯でダウン。チャンターさんは三升空けてダウン。じいさんは五升空けてダウン。ほんと、酒好きの胃はどうなってんだろうな。不思議だわ。
「さて。どっかで食事して帰るか」
ツマミをと頼んだので腹に溜まるものはなく、酒を飲まされ続けたので大して食ってねーのだ。
時刻は午後一時半くらい。うちに帰ってから食うのもイイんだが、うちに帰っても一人ならここで食っても変わりねーさ。
じいさんの酒場から近い屋台通りに向けて歩き出した。
さすがにこれだけいれば王都の地理には慣れてくる──と思ってスミマセン。また迷子になりました。
「……オレ、そんなに方向音痴じゃねーんだがな……はっ! 誰かの陰謀か?!」
とボケたところで突っ込み不在。カイナさん、カムヒア~!
「まあ、歩いてたら知った道に出んだろう」
なんて気軽に歩いていたら王都から出てしまった。え、なんで!?
いやいやいやいやあり得ねーだろ! 王都が広いからって王都の外までくるって、どんな超摩訶不思議な現象だよ! マジで誰かの陰謀だわ!
い、いや、落ち着けオレ。このファンタジーな今生に摩訶不思議なんてめずらしくもねー。あり得ねーことが起こるのが現実だ。
精神を落ち着かせるためにマンダ〇タイム。
「あーコーヒーウメー」
オレの精神安静剤のお陰でなんとか落ち着くことができた。もう、昼食ここでイイやとゴザを敷いてサプルの愛情パンとカイナが出してくれたイチゴジャムを出して昼食にした。
「甘いイチゴジャムとコーヒーは……合わねーな……」
うん、なんとなくやって見たが、想像通りダメだった。が、オレのために出してくれたものは食べ切るのがモットー。合わないながらも感謝を込めて食い切った。
「口直しするか」
さすがに口ん中がおかしくなったわ。
収納鞄から鳥の唐揚げとゆで卵、野菜スープを出して昼食のやり直しをする。
「うん、旨い」
なんでイチゴジャムとコーヒーなんて言う邪道に走ったんだろうと自己分析してたら遠くの方で轟音が轟き、土煙が上がった。
「なんだ、いったい?」
隕石でも落ちたかと、なに気なく見たらあらびっくり。マジで隕石が落ちてくるところだった。
隕石が地表に激突し、大爆発を起こす。そして、当然のごとくその爆風が迫ってきた。
「結界っ!」
なんて口にすることもねーんだが、余りの事と爆風の威力に思わず口にしちまったわ。
結界を張ってなければ木葉のように吹き飛んでいただろう爆風がやみ、視界がクリアになる。
「…………」
唖然である。昼食をする前、三百メートル先にあった林がなくなっているどころかクレーターが出来ていた。
と、誰かがこちらへと走ってくるのが見えた。
遠くてわからねーが、格好から言って冒険者。数は、四人だ。
と、その四人の背後、ではねーが、空から冒険者たちに向けて隕石が落ちてくるのが視界に飛び込んできた。
もはやパニックになっても責められる状況ではねーのに、なぜかオレは沈着冷静。右のポケットから金色夜叉を抜ち、左のポケットから鉄球を出した。
ひょいと、鉄球を空中に投げ上げ、タイミングよく金色夜叉を振りかぶった。
オレの十八ある殲滅技の一つ、殲滅ノックだ。
五トンのものを持っても平気な体で、結界に空気を圧縮した鉄球を全力で打つ。
ハイ、ちょっとした山が吹き飛びました。マジゴメンナサイ。
イイタイミングで打った鉄球が隕石に激突。超爆発を起こした。
細々とした欠片が広範囲に落ちてくるがオレの沈着冷静は騒いだりしない。左のポケットからBB弾くらいの鉄の玉が四千発詰まった結界球を取り出し、欠片に向けて打ち込んだ。
三秒で結界解除を設定し、半秒遅れて中心部の圧縮結界も解除するように設定した殲滅技の一つ、広域殲滅弾である。
ハイ、村から百キロ離れた山で生息していたワイバーンたちを絶滅させてしまいました。超土下座でマジゴメンナサイ。
四千発もの鉄の玉により隕石の欠片は跡形もなく粉砕──は、してねーが、まあ、王都には落ちてこねーから問題ナッシング。
「ほんと、隕石が降ってくるとかファンタジーってスゲーな」
まさか隕石を打ち抜く日がこようとは。我ながらスゲーことやるわ、ほんと……。
「た、助けてくれ!」
「殺される!」
必死で走ってきたのだろう、十一歳のガキに助けを求めてきた。
なにも知らかったのなら乞われるままに助けていただろうが、こちらに駆けてくるピンクの髪を持つ幼女を見てしまったからには聞く耳はない。
問答無用で結界捕縛。ポケットから縄を出して冒険者どもをふんじばった。
「村人さん!」
「おう、勇者ちゃん。思わずふんじばったけど、なんなの、これ?」
「誘拐犯だよ!」
とのことだった。
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