第335話 テンションマックス
と言うことでキャンピングカー試乗といきましょう。
見た目の良さ同様、中も見事なもんだった。
「スゲーもんだな。買ったら何千万円としそうだな」
まあ、キャンピングカーが幾らするか知らんが、このお洒落度と言い、匠の技と言い、何百万円では買えねー造りだぞ。
「そうだね。多分、そのくらいするんじゃないかな? 詳しくは知らないけどさ」
「カイナも見たことがあるものや触ったものを出せるのか?」
「ううん。欲しいものを念じるとそれに近いものが出るんだよ。ないのは出ないし、おれのいた時間までのものしか出せないけどね」
ふ~ん。反則までな能力でも制限とかあるんだ。神(?)さまはなに考えてんだろうな?
「でもまあ、楽っちゃー楽な能力だな。念じればイイだけなんだからよ」
この椅子なんて何十年も修行した木工職人にも真似できねーのを、イメージだけで出せんだからスゲーわな。
「おれみたいな能力を持った人、いるの?」
「同じかは知らんが、見たものや触ったものなら出せるらしいな。カイナが見たバ……なんだっけ? あのジェット機?」
「バルキリアアクティー。宇宙戦闘戦艦アルフェリンに出てくる可変戦闘機さ。まさかアニメのものまで出せるなんてチート過ぎるよ」
まあ、非常識な能力と言えば非常識だわな。見たものならアニメでもイイって言うんだからよ。
「その人、何者?」
「一言で言ったら汚物だな」
「はあ?」
「だから汚物だよ」
「いや、意味わかんないんだけど?」
「わかんなくてイイよ。そのうち嫌でも会うからよ」
できることなら汚物なんかに関わらせたくねーが、オレといる限り嫌でも接触しなくちゃならねー。ほんと、変なのと関わり持っちまったぜ……。
「……もしかして、この近くにあるダンジョンと関係ある?」
「知ってんのか!?」
エリナのところはオレの結界で囲っており、魔力遮断や気配遮断、視覚遮断とかいろいろやっている。まず見付けるのは不可能だ、と自負してたのに……。
「あ、やっぱり。なんかよくわからない力で覆われていたからなんだろうと思ってんだよね」
「な、なんかしたか? そこに……」
なぜダンジョンとわかるのかはどうでもイイが、あそこに手を出すとか無謀にもほどがあるぞ!
「大丈夫。なにもしてないよ。なにか嫌な予感したからさ」
ほっ。カイナが勘のイイヤツで助かったよ。
「関わってるオレが言うセリフじゃねーが、黒い馬車がきたら隠れろ。あれは死して腐の王になった汚物だ。男を見たら男と連結させて歓喜する変態だ。イイ人生を送りてーなら絶対に関わるな!」
もう被害に合うのはオレだけでイイ。カイナや身内には平和でいて欲しいよぉっ。
「あー、そう言う人、なのね。うん、なるべく関わらないようにするよ。おれ、そーゆーのダメな人だからさ。いや、自分の勘に従ってほんと、良かったよ。なんか身も毛もよだつ腐のオーラを感じたからさっさと逃げ出したんだ」
思い出したのか、体を震えさせた。
「まあ、嫌な気配がしたら逃げるなり近寄らせない手段を取れな。オレが必ず守ってやるからよ!」
「……あなたたち、恋人かなにかなの?」
空中を浮遊するプリッつあんをつかみ、頬をムギュとさせる。
「プリッつあん。世の中には言ってイイことワリーことがあって、それを言ったばかりに死んじゃったりするんだよ。口は災いのもと。ご注意だぜ☆」
優しく柔らかく、懇切丁寧に諭してあげた。
そんなオレの気持ちをわかってくれたのか、コクコクと青い顔して頷いてくれた。うん。わかってくれて嬉しいよ。
泣きそうになるくらい反省するプリッつあんを解放してあげ、キャンピングカー試乗を続けた。
「しかし、イイ造りだよな。家具も見事だし、台所とか風呂とかトイレもちゃんと付いてんだからよ」
台所とかトイレ、バスタブはさすがにプラスチックや金属だが、残りは木材を使用している。なんとも居心地のイイ空間になっている。
「イイよな、これ。自分の部屋に欲しいくらいだぜ。サリネに言ったら造ってくれっかな?」
いや、サリネにこれ見せてーな。どんなレボリューション起こすか見てみたいもんだぜ。
「なら、一つやろうか? そんな手間でもなければ労力でもないからね」
「マジで!? そりゃ嬉しいぜ! ぜひとも頼むわ! ひゃっほー!」
思わぬカイナのご厚意にテンションマックスになった。
「ふふ。ベーは素直に喜ぶよね」
「嬉しいことは素直に喜べ。オレは喜びに妥協はしねー主義だ!」
胸を張って断言する。
「ほんと、ベーは楽しく生きてるよ」
「おう。今もこれから先もオレは楽しく生きるぜ!」
そのためならどんな努力も惜しまねーぜ、オレはよ!
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