第333話 ナニイッテルカワカリマセーン
乾杯した後、カイナと前世の話題で盛り上がった。
なんとカイナとは同じ市の生まれで、同じ高校の出身だったのだ。
まあ、この世界にきたのは高校一年生のときで、後輩にあたるので面識はないが、知っている景色、知っている街の話をできるだけで嬉しくなるものだ。
「しかし、前世じゃオレより年下なのに、今生では年上とか、よーわからん状況だよな」
「そうだよね。しかも、時間軸が狂っていて意味わからんことになってるし」
まあ、そこは異世界だからってことで流しておくのが吉だな。
なんて楽しい時間はあっと言う間に過ぎるもの。隊商の連中や女衆が片付けする時間になっていた。
「おっと、もうこんな時間か。カイナの寝床創んねーとな」
離れはまだねーちゃんたちがいるので新しい家を用意せんとならんのだが、さて、どこに創っぺ?
「あ、それは大丈夫。いつも野宿だからさ」
「そー言うわけにはいかねーさ。歓迎しておいて野宿させるとか接待する側の所業じゃねーよ」
歓迎したからには心地好い宿泊を提供するのがオレの主義なんだよ。
「あ、ごめん。そう言う意味じゃないだ。おれの能力があれば宿屋に泊まることもないんだよ」
あん? どーゆーこった?
「十畳ほどの広ささえあればキャンピングカーを出せるし、水も食料も好きものを好きなだけ出せるからね、場所だけ提供してもらえるだけでいいってわけさ」
ほ~ん。そりゃまたスゲー能力だな。やっぱ若いヤツの発想は中年脳と全然違うわ。
「なら、うちの庭にしろや。せめて景色だけは提供させてくれ」
「アハハ。ベーの歓迎はスゴいね。さすがに景色までには頭が回らなかったよ」
そうか? キャンピングカーなんてお洒落な夜営セットがあるなら景色のイイところに泊まりてーじゃねーか。
「んじゃ行くか。あ、その前にちょっと寄り道な」
と、カイナを連れて自分の店に戻った。
「お洒落な店だね。小さい頃行った観光地を思い出すよ」
まあ、それをイメージにして造ったからな。
閉店した我が店に入ると、商品補充をしているレリーナのねーちゃんとフェリエが目に入る。
……なんだろう。疎外感がハンパないんだけど……。
「あ、フェリエ。オレ帰るからあと頼むな」
溢れ出そうな涙を堪え、言葉を紡いだ。
「ええ、わかったわ」
なんともあっさりした応えが返ってきた。こちらを見ようともしないで……。
もう泣いてイイかな? と自分に許可を求めたら、不意に肩に手が乗った。
「そんなもんだよ。この年頃の娘はさ」
なんかスゲー実感が籠った、哀愁ある笑顔に悲しみが霧散した。全国の父上さまに励ましのエールを送りてーよ。
よくわからん頷きをし合い、そっと店を出て我が家へと向かった。
男ってなんだろうね? なんてよくわからんことを語り合いながら我が家に到着。景色のイイ場所を見せた。
「いい景色だね」
「ああ。オレの一番大好きな景色さ」
二人並んでこの景色を分かち合った。
「……え、えーと、突っ込みが必要……?」
と、プリッつあんが目の前に現れた。なにやら奇妙なものを見る目をしながら。
「おう、プリッつあん。いたんか」
「……ベーって、わたしのこと、見えてるよね……?」
「?」
ナニイッテルカワカリマセンガナ。
「あ、やっぱり幻じゃなかったんだ。ベーの頭にいるのになぜかそのことに触れないからおれだけに見える妖精さんかと思ったよ」
え、いたんか!? なんて顔は見せませぬ。でも、マジでいたの? 全然気が付かんかったわ……。
「さて。この場所を使ってくれや」
こーゆーときはサラっとスルー。そして、雑音は右から左に流しましょう、だ。
「……ベーも大概だよね……」
ナニイッテルカワカリマセーン。
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