第279話 人外さんいらっしゃい
「ジ~ゴ~く~ん、遊びまぁしょ~!」
アロード武具店の前でジーゴを呼んだ。
バンと、ドアが勢いよく開いてラフな格好をしたジーゴが出てきた。
「なんの嫌がらせだ、このアホンダラがっ!」
「友達を誘う作法に乗っ取ってやってみた」
「なんの作法だよ! ガキみてーな嫌がらせすんな!」
「いやオレ、ガキだし」
まあ、十一歳でやるものじゃないが、気分的にやっておきたいものだったのでやらさせてもらいました。
「アホか! お前のどこがガキだ! 真っ当なガキに謝れ!」
なにやら爽快に返してくれるジーゴくん。ナイスです。
「アハハ。ノリイイな、ジーゴは。んじゃ、いくか」
ほんと、こーゆー突っ込みをしてくれる友人は宝だな。
「……お前と関わると自分が壊れてく感じがするよ……」
自分の殻を破り新しい自分になる、かどうかはワカリマセーン!
なんてバカなことをしながら漁港へとむかった。
「そう言やぁ、船はどうなったんだ?」
「ああ。ご隠居さんに頼んだ。漁港に用意してくれる……ん? どーした?」
隣りを歩いていたジーゴが視界から消えたので振り返ると、なにやら口を開けて驚愕していた。
「……ご、ご隠居、さんって、まさか、アビリオさまのことか……?」
「知らん。隠居って言うから敬意を込めてご隠居さんと呼んでるからな」
名前に興味はないし、名乗りも受けてない。過去にも興味……あるけど、オレの中ではご隠居さんで固定されている。もう変わらんよ。
「……お前、ほんと、なんなの? 師匠に認められたりアビリオさまと会ってたり、あり得ねーよ。アビリオさまなんてオレが小さい頃に会ったきりだぜ……」
「そうなのか? 悠久の魔女さんに買い出しとかさせられてたんだがな」
まあ、人外のなせる技。周りにバレないようにできんだろうよ。突っ込むな、だ。
「ゆ、悠久って、まさか、ナタリーエナさままでもか?! も、もしかして、大婆さままで……」
「グレンのばーちゃん、大婆さまって呼ばれてんだ。まあ、確かにご隠居さんや悠久の魔女さんより遥かに年上みてーだしな」
ありゃ、長寿なエルフより長生きしてそうだな。まあ、どうでもイイことだがよ。
「……なんだか、お前が魔王だって言っても素直に信じれそうだよ……」
「生憎、オレは村人だ。それ以上でもなけりゃそれ以下でもねーよ。よくも悪くもな」
「お前の言ってることがまったくわかんねーよ」
あれ? ものスゴく簡単に言ったつもりなんですけど。
「まあ、オレはオレ。オレのままに。生意気なクソガキで、イイ人生だったと言って死にてーただの人さ」
「うん。お前の言ってることがまったくわかんねー」
ハイハイ。もうどうでもイイよ。好きにしてくれ、だ。
なんだかテンションが下がったジーゴだが、釣りを止めるつもりはないらしく、黙ってついてきた。
漁港にくると、ご隠居さんが用意してくれた船がどれなのか一発でわかった。
つーか、その前にいる人外さんいらっしゃいでわかったよ……。
「──っ!?」
どうやらジーゴにはあの人外さんいらっしゃいどもがなんなのかわかるらしく、青い顔して絶句していた。
ほんと、なんなんだろうね、あの人外さんらは。
誰も彼も英雄譚から抜け出してきたようなヤツらばかりじゃねーか。あの六人だけで大陸統一できそうな感じだぞ。
一番目に付く獅子の獣人さんなんて去年まで獣王やってましたと言われても『ですよね~』としか言いようがねーわ。
まるで親友のように話す横のナイスミドルなんて勇者だろう。勇者じゃなかったらなんなんだよって感じの存在感と魔力だった。
ご隠居さんと話す人なんて明らかに王族。だってピンクの髪してるもん。まあ、王族に興味がないので誰かは知らんけど。
残り二人は見たまんま人外。いやまあ、別の種族だが、竜人族なんて初めて見たよ。つーか、魔力が化け物だな。たぶん、抑えてはいるんだろうが、考えるな、感じろセンサーが振り切れてるよ。
そして、最後の一人だが、見た目はどこかの高貴な人って感じで迫力に欠けるが、もうアレだね。尖った八重歯が吸血鬼って言ってるよね。突っ込みいっぱいあるけど、もう突っ込みする気力もねーよ。ほんと、人外多すぎだよ!
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