第278話 頼りになるカーチェさん
グレン婆さんの心地好い一時から倉庫に帰ってきた。
時刻はまだ三時半過ぎ。ガキんちょどもはまだ帰って来てない。なので、収納鞄の整理をすることにした。
基本となる収納鞄は入り口3つあり、一つは収納鞄の口であり、たぶん、二百三十四個は入っている。
自由自在なお陰で鞄の数や目的の鞄の出し入れは簡単なのだが、その鞄を出さないとなにが入っているかわからないのだ。
つまり、結界の中に結界を創ることは可能なのだが、なぜか自由自在度が下がり、扱い難くなるのだ。
主たる収納鞄から目的の収納鞄を取り出し、その中から必要なものを取り出していく。
まずは食料関係だな。
王都にきてから主たる収納鞄の中の食料の消費が激しく、コーヒーとコーヒー牛(羊)乳、あとは肉まんくらいしか入ってないのだ。
まあ、食料自体はたくさんあるので補給に問題はない。いつでも食える用にパン、ナン、煮物、焼き物、果物、お菓子、加工品を。皆で食える用に野菜、肉、魚、塩、ゴジルなどの調味料などを適当に入れていく。
食料は補給完了。次は金だな。
人魚からの真珠や副業で金は一国並みにあり、土魔法で金や銀は取り放題。宝石だって創ることができる。まあ、大変だけど。
基本、暮らしは自給自足だし、本や衣服は薬師や隊商相手の商売で充分こと足りる。なんで金は貯まる一方だ。
とは言え金の使い処は結構ある。王都で使ったようにな。
小袋を何十個か出して金貨を適当に入れて行く。ついでに真珠や宝石((エメラルドとルビーが人気なので)、金塊、銀塊、竜の鱗(需要があるので金の代わりになるのだ)を二つ目の口に入れていく。
ここは、武器入れも兼ねているのでアコード武具店で買ったものと自分で作ったものを入れて置く。ついでに服や生地、雑貨も入れて置くか。
「こんなもんかな」
3つ目の口は、道具入れであり雑用入れでもある。ちなみに釣り道具も入ってます。
「あ、兄貴。今帰っただよ」
タイミングよくデンコたちが帰ってきた。
時計を見れば五時過ぎ。いつもの帰宅時間であった。
「お帰り。疲れただろう」
立ち上がり、ガキんちょどもの帰りを迎えた。
「ベーさん、腹減りましたぁ……」
腹ペコキャラがすっかり板についたタケルくん。帰ってくるなり倒れ込んだ。
「んじゃ夕食の準備な」
まあ、食事はカラエら女子諸君にお任せなのでオレら男子は風呂に直行。女子は夕食後にゆっくり入るよ。
風呂のサイズは大きめにしてあるので十人は余裕だが、男子だけで二十七人(なぜか日々増えてる)はいるので交代で入る。
まあ、どこの世界でも男子はカラスの行水。体を洗って一分くらいで上がるのでオレら最後組までそう時間はかからない。
「やっぱ、いまいちだよな、この風呂は」
うちもここも沸かし風呂なのだが、水がよくねー。やっぱ水質の違いかね?
「毎日風呂に入れること自体が贅沢なんですがね」
エルフはキレイ好きな種族らしく、結構長風呂で、風呂文化をすんなり受け入れた。カーチェの話ではエルフの間で風呂が一大ブームなんだってよ。
「潜水艦には風呂あんのか?」
ちなみにタケルもカラスの行水派なんでとっくに上がってます。
「はい。狭いですがありますよ。至れり尽くせりの船過ぎて野営とかできなくなりますね」
「潔癖症にならんように注意せんとな」
この時代で潔癖症とか地獄でしかねーわ。
「そうそう。明日くらいには登録や配置が決まりそうです」
「へ~。そりゃ仕事が早いな。アブリクト島はどうなってた?」
「サプルがいい仕事をしてましたよ。もう何十人か住んで開拓してます」
「そりゃ重畳。親父さん、張り切ってんな」
「ええ。精力的に働いてますよ。娘さんに怒られるくらいに、ね」
まあ、そこら辺は家庭内問題。そっちでなんとかしてくれだな。
「ここの管理はどうなった?」
そう言う話はしてなかったが、オレが村に帰ることはカーチェも知ってるし、親父さんにも伝えてある。ガキんちょどもを頼むってな。
「それならダリとバリが引き受けてくれるそうです」
ダリエラとバリラが?
「ダリエラはともかくバリラまでか。バリラはうちの村にくると思ったんだがな」
魔術師なバリラだが、根は研究家(インドア派)。魔術や歴史が好きな女だ。それにいつだか自分の研究搭を建てて研究三昧するとかなんとか言ってた記憶がある。
ダリエラは元浮浪児で子ども好きな女なのでほっとけないと保護者になるのは見えていた。ここにはきてないが、孤児院の方には毎日きてるそうだからな。
「新婚生活を邪魔するほど野暮ではありませんからね、しばらくは王都にいるそうですよ」
「ふ~ん。別にきたって構わんのだがな」
「そうでしょうけど、バリなりの気遣いなんでしょう」
「まあ、きたら快適な搭を建ててやるよ」
なんだか山が賑やかになっていくが、まあ、なるようになるだ。
「なら、明後日には村に帰るか」
「わかりました。そう言う風に進めておきます」
まったく、頼りになるカーチェさんに感謝だな。
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