第212話 朝です
朝、いつもの時間より早く目覚めてしまった。
昨日は夕食をとったら、タケルもデンコも眠ってしまい、うるさくするのも悪いとカーチェたちの冒険譚を聞かせてもらおうとしたのだが、オレも疲れてたのか、しらずのうちに眠ってしまったのだ。
寝台を用意する前だったのでソファーの上だったが、ゆったりスペースの華、目覚めは最高によかった。
辺りはまだ暗い。まあ、まだ、四時半くらいだしな。
他はまだ眠っているので起こさずにソファーから下り、倉庫の外へと出る。
「お、綺麗な明星だな」
この世界にも暁に輝く星があり、これを見るとその日イイことがあると言われているのだ。
パンパンと手を叩き、明星に拝んだ。
「生きていることに感謝を。今日も一日生きられますように」
今度は村の方向を向いてオトンに笑顔を見せた。ザンバリーのおっちゃんのことは帰ってからするよ。
「……にしても、朝からアホの整列を見るとテンション下がるな……」
昨日のアホどもは帰したのに、なぜか増えてる。
なにを主張したいのか謎だが、手に大槌やら棒やらを持ち、変なポーズをしていた。
「都会には変なのが多いな」
見ていて気持ちのイイもんじゃねーが、それぞれの自己主張。世界に向けて己を示したいのだろう。気にしなきゃイイんだ、好きにしろだ。
朝の仕事をしないので、軽く運動して体をほぐし、体と気持ちを完全に目覚めさせる。
「うし! 今日もやったるぜ!」
隣の倉庫にいき、空気を入れ替え、光の玉を魔術で創り出した。
ポケットから鍵の束を出し、保存庫の一室と繋ぐ鍵を選び、空間に差し込み右に回す。
カチンと鳴り、結界が連結。ゆっくりと扉が開いた。
中には屋台車が十台収まり、煮用、焼き用、クレープ用、出来物販売用の屋台を四台出して扉を閉めた。
まだ屋台を出すことはないが、予定が未定なオレなので用意できるときにしておくのだよ。
次に鍵の束から燃料庫(薪や炭、動植物油が収まっている)と繋がる鍵を選び出し、中から炭袋を十袋ほど出した。
仕舞う前に掃除して壊れてないかチェックはしたが、念のためにチェックをしていく。
「うん。問題ねーな」
その頃には外が明るくなり、多分、オレが起きたときに目覚めていただろうカーチェが様子を見にきた。
「相変わらず働き者ですね、ベーは」
「村人は誰でもが働き者さ。二人は起きたかい?」
「まだです。外のはそのままでいいので?」
「オレのじゃねーからな、ほっとけや」
視界の邪魔だが、通行の邪魔にはなってねーし、オレがどうこう言うことじゃねーさ。
「ふふ。この先が楽しみだ」
なにがとは問わない。オレは楽しみじゃねーからな。
「さて。朝食の準備をするか」
「久しぶりにルコのジャムが食べたいな。今年のはできたのかい?」
「今年は生るのが早かったが、さすがにジャムはまだだよ。酒の仕込み前ってとこだよ。代わりにブララのジャムを出すよ」
まあ、ブララも去年のものだが、味は落ちてねーぜ。
「ブララか。それもいい。バリラがほとんど食べてしまうからあまり食べれてないですよ」
「ハハ。相変わらずの甘党だな、バリラは。よく太んねーもんだな」
うちにきたときは主食のように甘いもんばかり食っていた。それで体型が変わらんのだからスゴいよな。
「まあ、食べたら動くを実践してましたからね。倒される魔物が可哀想になるくらいに」
「女の心理はよくわからんな」
「それが女の心だよ。まあ、わたしもよくわからんがね」
だなと笑いながらゆったりスペース側の倉庫に戻ると、タケルとデンコが起きていた。
「おはようさん。よく眠れたか?」
「はい。でも、ちょっと体が痛いです」
潜水艦のベッドもうちのベッドも快適だからな、それ以外では体が痛くなるだろうて。
「デンコも眠れたか?」
「はいですだ!」
親が恋しいとかホームシックとかはねーようだな。やっぱ、デンコは心がしっかりしてんな。
「朝食出しとくから顔を──いや、風呂入ってこい。昨日入ってねーんだからよ」
「わかりました」
「はいですだ」
オレも出したら入るとするか。やっぱり風呂に入って眠らねーと体が気持ちワリーしよ。
ぱっぱと出して風呂へと飛び込んだ。
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