第211話 うち色食事
さて。バカどもにいつまでも付き合ってらんねーしな、ゆったりスペースを創りますか。
「まずは居間だな」
ここの時代の倉庫は切り出した石を重ねて板の屋根で塞いだものなので下は平らにした地面である。なので土魔法で改造し放題だ。
右足で地面を叩き、二メートル四方を三十センチほど上昇させ、中央に掘りこたつを創った。
「なぜにこたつ?」
タケルが首を傾げる。
「まあ、オレの趣味だな」
なんか倉庫が日本家屋っぽいからやってみたんだよ。
「不都合が出たらテーブルに変えるさ」
大した手間じゃねーしな。
続いてゆったりスペースの本丸たるL字のソファー(結界と併用することで柔らかくなるんだよ)と、一人用のを二つ、そして囲炉裏テーブルを創った。
「ん~。なんか寂しいな」
座り心地は自信があんだが、土色だからな、暖かみって言うのが柔らかさがまったく感じねー。
「……あ、確か去年、王都にきたとき買ったっけ」
収納鞄の中から目当ての収納鞄を取り出し、更に中から収納鞄を取り出した。
「マトリョーシカですね、ベーさんの鞄って」
「無限に入らねーからな、小分けにして入れてんだよ」
いやまあ、無限にできねーこともねーし、必要なものを選び出すシステムもやればできると思う。結界術超便利だからな。だが、オレの頭はそんなに超便利ではねー。なにをどれだけ容れたかなんてこと細かくなんて覚えらんねーよ。
自由自在に使用できるなら名を付ければ覚えられんじゃね? とか思ってやってみたが使用できるだけで覚えることは自前の脳ミソくんに頼ること大だったよ。
いろいろな試行錯誤の結果、本体の中に小分けにして容れておくのが一番わかりやすかったのだ。
生活用収納鞄から青く染められた布を取り出し、ソファーへとかけた。
「今はこれで我慢だな」
センスや質はともかく、クッションやクロスとか売ってる寝具屋があるから、そこで揃えるか。
「あ、トアラに頼むのもイイかもな」
うちにあるクッションや敷物はだいたいトアラが作ったもの。うちのゆったりの半分はトアラのお陰と言っても過言じゃねーな。
そうだな。トアラだけでは限界があるし、針子を探して見るか。
「台所も欲しいところだが、さすがに火を使うのはダメだろうな」
土魔法や結界でなんとでもなるんだが、火の不始末は重罪だ。中を見られたとき突っ込まれかねないしな、台所は我慢しとくか。食糧庫と結界連結すれば問題ねーしな。
「だが、風呂とトイレは創るがな!」
倉庫の奥を壁で区切り、そこをバスルームとする。
土魔法で二畳ほどの湯船とシャワー(切り替えれば水が落ちる簡単なもの)を創り、上に水がいっぱい入った収納タンクを。下には空の収納タンクを設置する。
「水風呂ですか?」
湯船にたっぷり入った水を見てタケルが首を傾げた。
「まあ、見てな」
収納鞄から結界玉を取り出し、湯船へと放り入れる。
──じゅゅゅっ!
一瞬にして湯船の水が熱湯になり、視界全てが蒸気に包まれた。あ、もちろん結界で皆を包んだので問題ナッシングです。
「う~ん。やっぱ攻撃用じゃなく専用のを創らんとダメだな」
サプルの火魔術をオレの結界で包んだ手榴弾モドキ。発想はイイんだろうが威力が大間違いだった。
結界で蒸気を集め、蒸気玉にして収納鞄に戻した。
「ベーさん、ああなるなら言ってくださいよ! 心臓停まるかと思いましたよっ!」
「アハハ。ワリーワリー。そう怒んなって」
「そうですよ、船長。寛大でいないとベーの理不尽に殺されますよ」
「涼しい顔で毒吐くよな、カーチェって」
「涼しい顔で非常識を垂れ流すベーよりはマシです」
「さて。次はトイレだな」
口で勝てないのでさっさと逃げ出した。
まあ、トイレも風呂と創りは同じ。ただ、結界でウォシュ〇ットにして風を出す創りにすればオッケーだ。
「さすがにトイレットペーパーはないんですね」
「これで我慢しろ。そのうち汚物に頼んでやっからよ」
うちもこれ方式だったのだが、タケルには不満なようで潜水艦からトイレットペーパーを持ってきて使用してるのだよ。
「あ、ベーさん。お腹が空きました!」
トイレの話題中にとかタケル(の腹)に言っても無駄。なので夕食にすることにした。寝台は寝る前でも充分だしな。
「カーチェはゴジルの野菜鍋でイイか?」
カーチェは肉を食べないエルフなのだ。
「ああ。それと葡萄酒も頼むよ」
「あいよ」
タケルとデンコは旨くてたくさんあればそれでよしなんで、適当に出しておく。
「では、いただきます」
「「「いただきます」」」
すっかりうち色に染まった食事である。
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