第197話 やっぱ我が家が一番
「さて。今日やれることはやったし帰るとすっか」
ロフト的な寝床を作り終え、イイ時間になったので帰ることにした。
「ワリーな、船長さん。いろいろ付き合わせた上に寝床の準備まで手伝わしっちまってよ」
なに気に付き合いイイよな、この船長さんは。
「構わんさ。おれが好きでやってることだしな。久しぶりに心が踊ったぜ」
「そりゃなによりだな」
こうやって生まれたんだ、心踊らせる毎日にしねーともったいねーぜ。
「しかし、本当にボブラ村に帰んのか?」
「ああ、帰るよ。夕方頃にルククが、渡り竜が迎えにくるんでな」
ただ今の時刻、午後三時過ぎ。イイ頃合いだ。
「せっかく借りて寝床まで作ったのに、惜しいだろう」
「なに、明日もくるし、そしたらここに泊まるからな、惜しくはねーさ」
ワクワクでドキドキな秘密基地お泊まりは明日のお楽しみです。
「そうか。まあ、気を付けて帰れよ。あ、バーボンドさんに連絡しておくか? 王都でも一、二を争う商会だ、連絡しておかねぇと門前払いされるぞ」
あー、確かにあり得ねー話じゃねーな。
「んじゃ、頼めるかい?」
「ああ、頼まれた。それと、なんか伝言があるなら受けるぞ?」
「そのうち遊びにいくよって伝えてくれや」
計画を立てようが、オレの人生に『ご利用は計画的に』なんて言葉はねー。あるのは『なるようになる』だけ、じゃねーが、まあ、今世のオレはそんな感じで生きてます。
倉庫の扉を閉め、施錠する。あと、結界もね。
「本当にありがとうな、船長さんよ。これは礼だ、仲間と飲んでくれや」
バリアルの街の特産品である葡萄酒小樽)を収納鞄から出して船長さんに渡した。
「これは?」
「バリアルのコーキュ種の葡萄酒と言えば有名だろう?」
この国、主に海側ではエールが一般的な酒だが、山の方では葡萄酒が主流になっており、特にバリアルの葡萄酒は味がよく、貴族の間で流行ってるそーだ。
「いいのか、コーキュ種の葡萄酒と言えば一樽金貨一枚はする高級酒だぞ」
「気にすんな。元々世話になった人への礼として買ったもの。感謝の印にもらってくれや」
金で感謝するのもなんだしと、酒を飲めるやつには酒を。甘いものが好きなヤツには砂糖を使ったジャムとかを礼にしてるのだよ。
「ああ。せっかくの感謝だ、ありがたく受け取らせてもらうよ」
「ありがとな」
「……お前はほんと、感謝ばかりだな……」
死んで生まれてわかったことだからな、常に感謝は忘れねーんだよ。とは言わない。これはオレだけが知り、オレの勝手でやってることだからな。
なのでニヤリと笑っておく。
「んじゃ、またな」
ここを利用する限り、いつでも会えそうなので別れはサラっと済ませ、王都を出た。
途中、なんかチンピラ風のアホどもに行く手を遮られたが、構っている暇がないので体重を重くする結界を纏わせ、その場に放置した。
王都を出て二キロ。人の通りがなくなったので空飛ぶ結界で空へと上昇する。
しばらくマ〇ダムタイムしながら景色を堪能し、そろそろかなと片付けたところでルククがやってきた。
「キュイィ」
「お、その感じでは腹一杯食ったようだな」
王都の沖合いには幾つもの無人島があり、ブララが生っているのだ。まあ、味は知らんがな。
「じゃあ、帰るか」
「キュイッキュー!」
合点承知だぜ! とオレの頭が勝手に変換し、我が村へと向けて羽ばたいた。
そんでもって無事村に到着。ルククの背から飛び下りた。
「しばらくは仲間とゆっくり休めな」
「キュイィー」
落下するオレの周りを旋回してから仲間がいる湖へと帰っていった。
結界を使い、ふんわりと着地する。
「あ、あんちゃんお帰り!」
「お帰り!」
庭先で剣の稽古をしていたトータとカブがオレに気がつき、帰りを迎えてくれた。
「おう、ただいま。何事もなく家を守れたようだな」
まあ、あるとはこれっぽっちも思ってねーが、無事な家や家族を見るとほっとすんだよ。
「うん。なんもなかった」
「なかっただよ」
結構結構と二人の頭を撫でてやった。
「さあ、夕食にすっか。カブも家に帰ってオカンの料理を腹一杯食えよ」
「わかっただ! じゃあ明日な、トータ!」
「うん、またな!」
なんか羨ましいくらいの友情が育ってんな、この二人に。
そんな弟に軽い嫉妬を感じるが、スーパー幼児に友達ができた方が遥かに嬉しいぜ。
今日のことを嬉しそうに語るトータを微笑ましい気持ちで受け止めながら我が家へと入る。
「あ、ベーさん、お帰りー」
「ベー、お帰り」
「お帰んなさい、あんちゃん」
ぐぅ~(モコモコガール流のお帰り、だと思う)。
ああ、やっぱ我が家は一番だぜ!
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