第147話 将来が心配
さて。腹も落ち着いたし、収穫の続きをやるかね。
「んじゃ、ブララ採りにいってくっから、サプルに潜水艦見せてやってくれや」
よっこらせと立ち上がると、慌てたタケルがしがみついてきた。
「ベ、べーさん捨てないで!」
「アホかっ、人聞きのワリーこと言いやがって!」
力の限り(?)手加減してタケルの頭を叩いた。
「ったく。どんだけ寂しん坊なんだよ! ちゃんと助けてやるし、話も聞いてやる。が、こっちにも都合があって収穫があんだよ。だいたい三時──って、そう言いやぁお前、腕時計なんて持ってねーか? いや、お前の未来的な潜水艦って、この世界の正確な時間ってわかるか?」
生まれて十年、陽の位置と勘で時間を感じてきたが、やはり正確な時間がわかんねーってのはむず痒いものだ。やっぱ、時間が知りてーよ。
「時計ですか? はい、予備の装備あります。持ってきましょうか?」
「ああ。もらえるならもらいてーな」
わかりましたと返事すると、部屋の隅にあった金属製のトランクを開いた。
中をがさごそと漁り、なにやらごっつい未来的な腕時計を持ってきた。
持ってものを受け取り、いろんな角度から眺める。ガジェット感、ハンパねーな、コレ……。
「それ、イ六〇〇改の装備品で通信機と武器になってます」
まあ、どれほどの性能があるかは知らんが、オレの細腕にはちょっとデカイな。
「もう少し小さいのはねーのか?」
「すみません。イ六〇〇改は戦闘艦なんでファッション用のはないんです。あ、でもイ六〇〇改からの電波受診と電力補給してるから壊れない限り五十年は平気です」
その五十年はどっからだよと突っ込みてーが、まあ、アニメの中のもんだし、ふ〜んで流しておけだ。
「それに、いろんなツールが備わっていて便利なんですよ。この腕時計型通信機は、撮影や録音機能があるだけじゃなく、威力は小さいですがレーザーが撃てますし、カッターワイヤーが巻かれているのでこうして引っ張れば人の首を締めたり木を切ったりもできるんです。他にも──」
「──あーわかったわかった。スゴいのはわかったよ。コレの説明もあとで聞くからサプルに潜水艦見せてやってくれ」
タケルのうんちくを振り払い、家の外に出る。午後は島の裏にいってみるか。
さて行くかと体を山へと向け、そこで思い出す。サプルのお宅(船※番外編の方で書いてます)は危険がいっぱいなことを……。
「……あーサプルや」
「うん? なーに?」
家から出てきたサプルに呼び掛ける。
「んーとだ。潜水艦って乗り物は繊細だから中で魔術とか使うなよ。場所によっては爆発するものがあるからな」
「へー! そうなんだ。うん、わかった!」
なんかもう眩しいくらいの笑顔を見せる。
……たまに、この純真が信用ならないんだよな〜……。
じゃあ行ってくると、サプルの頭に手を乗せたときに魔術拡散させる結界を纏わせた。
それでも油断できないのがサプルだが、まあ、なるようになれだ。先なんて見えねーんだからなってから考えればイイさ。
気持ちを切り替えて島の裏へと向かった。
島自体はそれほど高くなく、初めてきたときに土魔法で道を創っておいたので二十分もしないで到着する。
「おっ。今年もラビーの実は豊作だな」
見た目は熟す前のプチトマトに似てるが、蔓植物でブララの木に絡まり、同じ時期に、島の裏の陽が当たらない場所に実るのだ。
見た目とは違い実は固く、煮ないと柔らかくならず、栗のようなホクホク感が出ない。オレとしては砂糖を混ぜて餡にしてパンに挟んで食うのがイイな。あ、今度サプルにアンパン作ってもらおう。アンパン食いてーや。
なんてことを考えながらラビーの実を採り、ブララを採っていく。
一時間くらいした頃だろうか、なにかエンジン音が耳に届いた。
まあ、タケルがなんかやってんだろうと頭の隅で思うくらいで気にせず採っていると、なにか頭上を飛んでいった──な〜と思う暇なく吹き飛ばされてしまった。
な、なんだ?! なんなんだいったい!? なにが起こったんだっ!!
茂みに突っ込んだ頭を抜き、辺りへと視線を向ける。が、凄まじい風が起こったとしかわからない状況だった。
なにかゴーと言う音が耳に届いてはいるが、この状況を飲み込むのが精一杯でうまく思考できないのだ。
……よし、まずは落ち着けオレ。クールだ。クールになるんだ。クールになればなんでもできる。クールですかぁっ!
なんてバカやってたら落ち着けた。ふっしぎぃ〜! じゃなくて! なんなんだよいったい?
改めて周りに目を向け、そしてゴーゴー鳴る空へと目を向けた。
「……サプルだな……」
意味もなく確信する。オレを吹き飛ばした犯人であり、空を翔る゛ジェット機゛を操っているのはと……。
「……あんちゃん、お前の将来が心配だよ……」
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