第143話 アホとの遭遇

 オレたちが向かっている場所は無人島だ。


 二年前にルククと遊んでいるときに発見し、そこでブララとラビーを見つけたのだ。


 元々ブララはこの国に自生しており、それほど珍しくもないのだが、熟してもすっぱいことから誰も食べないものなのだ。


 村の近くにも自生してて、子供の頃……って、今も子供か。まあ、三、四歳頃に口にし、煮込めば食えんじゃね? とやってみたのだが、そんなに甘くはならなかった。ただ、風味はイイと感じ、砂糖を入れればと思って、心に留めていたのだ。


 それに、ラーシュの国では砂糖が一般的に普及しており、それほど高くないとのことで風呂敷一枚分(だいたい三トンくらいかな?)を送ってもらっていたからブララが大量に自生する島を見つけたときは踊り狂ったものだ。


 ちょっと前にルククとサプルの遊び(ドッグファイト)が終わる頃、ブララが自生する島ーーブララ島 (まんまですんません)が見えてきた。


 徐々に近づいてゆき、ルククが着陸体勢を取ったとき、サプルが操るファニー号が接近してきた。


「あんちゃん、あれ!」


 と、ブララ島を指差した。


 着陸体勢になっているため、ルククの首で前方が見えない。なので着陸を中断。ブララ島を見えるように旋回してもらった。


 今世のこの体は丈夫で、五感も前世より数倍も優れている。なので一キロ先のものもだいたい把握できた。


 だが、今世ではまず見られないものだったので、見たものを素直に受け入れられなかった。


「あんちゃん、どうする?」


「まずオレが確認する。オレが合図を送るまでサプルは近付くな」


「わかった!」


 あたしもいく! とか言うバカな妹じゃなくて助かる。ほんと、サプルは賢い子だよ。


「ルククも待ってろな」


「キュイー!」


 うん。お前も賢い子で助かるよ。


 ルククと繋ぐ結界を解除し、ルククの背から飛び下りた。


 スピードには恐ろしくて着いてけないが、高さなら怖くはない。むしろ、好きなくらいだ。


 自由落下のまま百メートルくらい落下してから空飛ぶ結界を創り出した。


 落下速度を調整しながら海に着水。海面を滑るようにブララ島に近づく。


 ブララ島は無人島であり、陸から七十キロは離れている。ハルヤール将軍からの情報では人族の海路でもないし、人魚族からの海道かいどうからも離れているとのこと。海流も激しいとのことで海竜も近寄らないそーだ。


 ここにくるには空からくる方法しかない──はずなのだが、入江で魚釣りでもするかと創った防波堤に、未来的なものが接岸されていた。


 ……宇宙船……?


 形状はそう見える。


 全長は約百メートル。窓のようなものも見えねーし、船橋のようなもんもねー。武装らしきものも見て取れねーな。


 噴射口らしき背後から近づき、横に移動して絶句する。


 その宇宙船っぽい横っ腹に、日本語で『イ六〇〇改』と書かれ、なんかこの宇宙船っぽいものを無理矢理擬人化──女の子にしたものが描かれていた。


 あ、うん。転生者だわ。


 もうそれ以外になにがある。あったらオレは暴れ狂うぞ!


「……またアホなこと願いやがって……」


 いやまあ、なにを願ったかはわからねーが、こんなものを持って転生したヤツがアホじゃなかったらなんなんだよ。もう、エリナ以上のアホだわっ!


 頭痛を堪えながら正面に回る。


 しばし様子を見るが、宇宙船っぽいものから反応はない。乗ってねーのか?


 しょうがねーので堤防へと上がる。


 辺りを見回すと、なにやら生活臭が漂っていた。


 ブララ島には年に二、三回くらいしかこないが、万が一の避難地として土魔法で家(雨風凌げる程度な)を創り、井戸を掘ってある。


 そんな家から煙が上がり、懐かしい前世の音楽が流れていた。


 まあ、ここは無人島だし、オレの所有地ではねー。誰が住もうが口出す権限もねー。なんで、どうしようとオレは気にしねー。


 だが、フリーダムな姿で銃を向けられてたら気にしねーわけにはいかねーよ。


「あんたがどんな人生を送ってきたか知らねーし、こんな無人島にやってきた正体不明のガキに恐れを抱くのもわかる。だが、そのふる〇ンは仕舞えや! もぐぞ!」


 露出趣味をどうこう言うつもりはねーが、サプルにやったらもぐどころじゃねーぞ、こん畜生がッ!

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