第142話 人外どもの遊び
「さて、準備するか」
いつものように大した準備もないのだが、今回ブララを採りに行く場所は、ここから百キロ近く離れたところ。ちょっと遠出になるので装備は革のジャケットに革のズボン。ゴーグル。安全ブーツ。山刀に投げナイフとハサミが差せるベルトをする。
あとは結界鎧を纏えばいつでも出発可能だ。
で、サプルの準備だが、スーパー幼女たるサプルちゃんの移動方法はオレ製の飛行機だ。
秘密基地にあるのと同じく、浮遊石を搭載し、風の魔術を圧縮して噴射口から出すと言ったものだ。
もちろん、専門的知識があるわけじゃねーし、部品など想像で作った、なんちゃって飛行機だが、そこは超便利な結界術で補えばちゃんと空を飛ぶことができるのだ。
エンジンや制御機関なんてないので飛行機のサイズは大きくない。が、万が一のことを考えて骨組みは鉄にして装甲は二ミリくらいの板金を張ってある。
まあ、複座にして畳み一畳くらいの貨物室を作ったので更に重く、そして大きくなってしまったが、スーパー幼女サプルちゃんにかかれば馬に跨がるより巧みに操ってくれるので問題なっしんぐ。火竜とドッグファイトして撃ち落としちゃう子だからネ。
「サプル~。用意はイイか?」
地下の発射路に繋がる伝声管の蓋を開け、サプルに尋ねる。
「イイよ~!」
「んじゃ、発射扉開くぞ」
家畜用の水のみ場の栓を抜き、水を流し出す。
まあ、本当ならプールにしたかったのだが、さすがに場に合わないし、世間体があるので水のみ場にしたのだ。
縦三メートル。横五メートル。水のみ場にしてはデカいんじゃね? との突っ込みはノーサンキュー。趣味のためなら実益など二の次三の次なのだ。
ハンドルを回し、手動式の扉を開放する。こーゆーアナクロな方がオレ的に燃えるのだよ。
発進信号はないのでサプルちゃんの気分次第。まあ、開いてから十は数えろとは言ってある。
発射路から風が吹き出し、そして、オレ製の飛行機──命名サプルの愛機、ファニー号が発進する。
飛行機と言うよりロケットに近い形をしたファニー号は、時速にしたら二百キロは出てるんじゃないかと言う勢いで上昇していく。
燃料や推進力はサプルの魔術によるものだから前世の飛行機(プロペラ機)には負けるだろうが、それでも人が出せるとは思えない速度である。
「……ジェット機に勝つ日もそう遠くはねーな……」
もはや人の域を飛び出してるのだジェット機に勝っても不思議じゃねーわ。
さて。サプルが本気を出したらルククに勝る(直線飛行ではな)。急がないと置いていかれる。
発進に全ての力を注ぎ込んでしまったので収納はバックで、結界で入れないとならない。なので水のみ場はそのまま。だが、誰かが落ちる可能性もあるので結界で封印です。
「ルクク、いくか」
結界鎧を纏い、ルククの背に飛び乗った。
もちろん、ルクク用の竜具(馬具の竜版だな)をしてあり、手綱もしてある。まあ、怖いので結界でも固定してますがね。
「ルクク、ゴー!」
竜のほとんどは風の魔法を使うので翼の一羽ばたきで飛び立つことができ、二羽ばたきで地上二十メートルくらに達する。
グングンと上昇して行き、陽当たり山と同じ高さに達し、海の方で大きく旋回してファニー号と合流した。
サプルに目を向ければ、笑顔全開にしてオレを見ていた。
人指し指と中指を合わせて掲げ、ゴー! とばかりに振り下ろした。
ルククとの遊びはだいたいが競争であり、鬼ごっこ(ドッグファイトとも言う)。そのための飛行機サプルである。
それはサプルも理解しているので、ゴー! の合図で本気マジ全開。圧縮させた風の魔術を、これま全開にして四つある噴射口から吐き出した。
結界鎧をしているので重力とか風圧とかは関係ねーのだが、それでも飛んでいる感覚はあるし、四百キロ(考えるな、感じろ的メーターによるとだ)も出てたらおっかねーよ。
もはやオレはルククの付属品。ただつかまっているしかない。
つくづくオレって凡人だな~と現実逃避する。だってそうしないとおっかねーんだもん! 人外どもと一緒にすんじゃねーやい!
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