第140話 コーヒー牛乳(羊乳)完成!

「べー! お昼だよ~!」


 ──は!


 オカンの声で我に返り、焙煎したコーヒー豆を結界臼で挽いていた手を止め、辺りを見回した。


 ……い、いつの間にかコーヒー作りに熱中しちまったぜ……。


 いやまあ、脱線するのはいつものことだし、熱中するの日常。今更だな……。


「あいよ~。今いくわ~」


 結界臼をそのままに家と向かう。


 乗馬をしていたサプルや魔術の修行していたトータはすでに席に着いていた。ダメなあんちゃんですまぬ。


 なんて謝りながら席に着いて昼食をいただいた。


「あ、サプル。ワリーがこれをたくさん作ってくれねーか」


 先程創った牛乳瓶(紙蓋がないんでコルクを仕様です)を取り出してサプルに渡した。


 受け取ったサプルは、いろんな角度から眺める。


「うん、わかった。作っておくよ」


 どうやら作れるよーだ。さすがサプルちゃんです。


 昼食が終わり、しばしの食休み。さあ、今度こそラーシュからの手紙を読むぞー! と、いかないのがオレ。コーヒー作りが気になって手紙など読んでいられないのだ。


 ならコーヒー作りをやっちゃいますかと初志貫徹なんて知らねーよとばかりに熱中するオレでした。


 まあ、さすがに荷車二台分もの量をやれないので、その日は半分を焙煎することにした。


 で、次の日は結界臼で挽く作業。全てを同じ大きさにするのもなんなので四段階に分けて挽くことにした。


 やはりそれでその日は終了。夜はアリテラとのおしゃべりでラーシュからの手紙は一文も読めなかっ──じゃなく、読まなかった。


 三日目はドリップ作業──しようとして入れ物がないことに気が付いた。


 樽──はねーし、羊乳タンク──もねーな。牛乳瓶は昨日の段回で三十本は作ってくれたが、全然足りねー。


「しゃーねー。土魔法で創るか」


 いやまあ、いつものことですがね。


 二十リットルくらい入りそうな陶器タンクを七つ創り、結界ドリップの下に置く。


 結界ドリップの上には四百リットルの結界タンク。それをサプルの魔術でお湯にし、結界を調整して結界ドリップに流し込む。


 それを四つ並べ、ドリップされるのをひたすら待つ。おっと、結界ドリップが詰まってきた。交換交換っと。


 待つ時間に手紙でもと思うだろうが、目を離せねーのが今世のオレ。ドリップされていくのをただ黙って、ひたすら見詰めるのであった。


 夕方になるころにやっと全てがドリップされた。


「ふ~。終わった~」


 だが、それで終わりではない。オレの最終目標はインスタントコーヒーを作ること。直ぐに飲めるようにすることなのだ。


 ドリップした後のカスは肥料とか染め物、ワックスになるとか聞いた記憶があるので陶器に入れて後で役に立てよう。


 最終的にドリップさせた量は二十リットル陶器タンク四十三個ほど。なかなかの量である。


「べー! 夕食だよ~!」


「あいよ~」


 もう食事の度に呼ばれるので返すのも慣れたものだ。いや、慣れちゃダメなんけどねっ。


 んで次の日。なぜかねーちゃんらやあんちゃんの嫁さんがいた。


「どーしたん?」


「いや、なんか不思議なことやってるからなにかな~と思って」


「今日は休みにしたから暇潰しね」


「べーくんのやること、見てておもしろいから」


「うん、そんな感じ」


 ねーちゃんらの談。


「ちょっと勉強の一休みにね」


 あんちゃんの嫁さんの談。


 まあ、集中したら周りが見えなくなるオレ。ご勝手にだ。


 さて。今日はドリップしたコーヒーを乾燥させる作業だ。


 っても結界があれば難しくねーし、手間でもねー。区別したごとに結界タンクに注ぎ込み、水だけを排除すればイイだけ。あ、水はちゃんと水路に流してますからね。


 結界タンクには粉になったコーヒーが溜まっている。


「暇なら手伝え」


 と、ねーちゃんらを使い、コーヒーの粉を漬け物に使っていた壺 (バケツくらい)に入れていく。


 てきた数は壺四つ。四種類なので一壺ずつしかできなかった。


 ……意外と少ねーもんだな……。


 でもまあ、うちで飲むやつだ。こんなもんで充分だろう。豆はまだ半分あるから足りなくなったらまた作ればイイし、来年またくるだろうからなんも心配はねーさ。


「あ、サプル。羊乳タンクを持ってきてくれねーか。で、牛乳瓶は何個できた?」


 牛乳瓶を持ってきたサプルに尋ねる。


「これで百三十本だよ」


 本当にスーパー幼女サプルちゃんは仕事が速い。瓶に山羊の絵まで刻んでるよ。


「手伝ってくれた礼だ。今、旨いもんを飲ましてやるよ。待ってな」


 サプルが持ってきてくれた羊乳タンクから羊乳を瓶に九割ほど注ぎ、コーヒーの粉と砂糖をスプーン一杯ずつ入れる。で、コルクをして中を瓶を振る。


 イイ感じに混ざったらサプルの魔術で冷却。これでコーヒー牛乳──じゃねーか。コーヒー羊乳のできあがりだ。


「……美味しい……」


「な、なに、これ……」


「初めての味だわ……」


「べーがいつも飲んでるものがこんな美味しいものになるなんて……」


「……信じられない……」


 まあ、デキはイイってことだな。


 オレも一口飲んでみる。が、コーヒー牛乳の記憶があるからか、なんかイマイチな感じはするが、それは後々の工夫次第だな。


「ふふ。これで風呂上がりの楽しみができたぜ」


 やっぱ、風呂上がりにはコーヒー牛乳(羊乳)を飲むのが作法だろう。うん。

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