第136話 そーゆー方向で

 オレの宣言に二人(?)は沈黙する。


 それが呆れからくるのか、それとも意味不明からくるかはわからんが、自分が無茶言ってるのはちゃんと理解している。


 軽く街と言ったが、そう簡単に造れるもんじゃねーし、面倒なことしかねー。ましてや国なんて頭がイカれてるとしか思わんだろうよ。


「別に直ぐにって訳じゃねー。街まで持って行くまで十年近くは掛かるだろうし、国なんて何十年も先のことだ。まずは、街を造るための下準備。お前のメシを得るため環境造りだ」


 マンションを浮かし、その下に通路を創りして地下に伸ばす。長さは適当で停止したところの空間を広げる。


「そー言やぁお前って、どーゆー食事法なんだ?」


「え? どうとは?」


「いや、リッチって生き物のなにを食うんだ?」


 リッチの存在は魔物図鑑で知っているし、命を奪うとしか書いてなかった。その命をどう自分の糧にしようってんだ。口から食うのか? それとも血でも吸うのか?


「え、えーと、エナジードレイン──生命力吸収でござる」


「エナジードレイン? 生命力吸収?」


 意味がわからん。


「えーとでござるな。補食対象に触れるか拙者の部下がダンジョン内で殺せば拙者の糧となるでござる」


「んーと、肉とかは食べねーのか?」


「肉は部下の糧でごさる」


 なるほど。それは好都合だ。


「わかった。ますます計画が楽になるな」


 底の空間から横に伸ばし、港へと繋げる。


「港──つーか、人魚族と商売して海の幸をここに運び命はエリナに。身は加工するなりしてここに住む住人用の食料、または外貨稼ぎにする。保存はオレの力で時間停止させるから貯めるだけ貯めればイイ。で、だ」


 炬燵の上の計画図を消し、再度マンションを小さく創り出した。


「エリナはこーゆー掘削法をテレビで観たことあるか?」


 マンションを中心にすり鉢状に削って行くように結界図を描く。


「観たことあるでござる」


「じゃあ、ジオフロントってのもわかるか?」


「〇ヴァは何度も観たでござる。あ、ヴィどのも観たでござるか? アレは神でごさるな。拙者──」


「──いや、その話は暇なときにな。今はこっちだ」


 オレはテレビっ子だがオタクではねー。そんな熱いトークなんてできねーよ。


「まあ、基本、地下に造るんだが、お前の力で光とか生み出せんだろう?」


 通路もマンションが建ってる空間も光が生み出せれて外よりはちょっと暗いかなって程度だ。


「はいでござる。まあ、魔力は消費するので夜は消すでござるが」


 なんつーか、律儀な性格してんな、お前は……。


「ま、まあ、その辺はどうでもイイよ。で、だ。お前の能力つーか、食料次第で段々と広げて行く。その段々には畑やら牧場を造る。まずはオークを飼って肉確保。あいつら繁殖力高いからな」


 オークの群れがくるって言うのなら更に好都合。遠慮なく糧になってもらおうじゃないの。


「とは言ってもオークだけじゃ飽きるから山羊や鶏、牛なんかを飼う。もちろん、麦や野菜、できれば玉蜀黍が欲しいんだが、まあ、今度王都に行くし、そんときに捜してみるわ」


 それほど古い国でもなけりゃあ、大国でもねーが、うちの国の王都は港を持つ。市を探せばなんかあんだろう。


「つーことで、まずは地下への通路と空間創り。ジオフロント製作。オークの飼育と繁殖。周辺の警戒。オークがきたら捕獲だ」


「理解でござる。で、ヴィどのなにをするでござる?」


「港から底の空間まで通路を造る。繋げるだけなら二日もかからんしな」


 まあ、水路にしたり、下水道も造らんといかんから完成までには一月は掛かるがな。


「これと言った計画書はねーが、何日かに一回はくるようにする。まあ、そんときに進行状況を報告し合う。非常事態があれば連絡し合う。で、イイか?」


「了解でござる」


 まっ、あっさりしたもんだが、まあ、こんなもんだろう。


「んじゃ、そーゆー方向で」

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