第135話 計画発動
数日前と変わらない通路を通り、ダン──じゃなく、マンションにやってきた。
「お、いらっしゃい」
ナイスなミドルさんに迎えられた。
「えーと、総──じゃなく、あーーー」
名前、なんったっけか? いろいろあって覚えてねーや。
「イチ蔵だよ」
「ああ、そうだった。ワリー。で、なにやってだ?」
なにやら竹製のベンチに座り、囲碁なんかを打ってるようだが……。
「まあ、番犬なんでな、見張りだよ」
……イイんだ、番犬で……。
なんか納得できねーもんがあるが、世の中突っ込んだら負けなこと多々ある。なんでスルーしておこう。
「そ、それはご苦労さん。お邪魔してもイイかい?」
「主の客を追い返すなんでできんよ。遠慮なく上がってくれ」
「ありがとよ」
礼を言ってバンベルの後に続いてマンションへと入る。
「いらっしゃいませ、べーさま」
お胸さまの管理人さんが管理人室の小窓から笑顔満点で迎えてくれた。
初めてきたヤツはここがダンジョンだとは夢にも思わんだろうな。つーかもう、ダンジョンヤル気、まったくねーよな、エリナのヤツ……。
「お邪魔するよ」
手をあげて応え、そのままエレベーターに載った。
前と同じく五階に到着。扉が開くと真っ暗な世界が現れた。
「……引きこもりってある意味スゲーな……」
こんな真っ暗なところに一日中いるって、オレには拷問としか思えねーよ。でもまあ、リッチならこーゆーのが快適なんだろう。理解したくはねーがな。
「マスター。べーさまがお越しになられした」
ぽよんぽよんと中に進んで行くバンベル。オレらはエレベーターを出て暗闇に目が慣れるまでその場に止まった。
「トータ。落ちてるのに触るなよ。触ったとしても中を見るな。夜中どころか外にも出れなくなるほどおぞましいものが描かれている。絶対に触るなよ」
まあ、中を見たことはねーが、表紙だけで中身が汚物だとわかる絵柄だ。トラウマになること必至だ。
目が慣れてくると、バンベルのぽよんぽよんした体が見えた。なにやら机(なんかの箱に板を乗せたもの)に向かってなにか作業するエリナを揺らしているよーだ。
「マスター。べーさまがお越しになっているのですからそう言うことは止めてください!」
「見逃すでござる。神が、神が降りてきたのでござるよ!」
それはなんの邪神だと突っ込みてーが、それ以上に関わりたくねーから無視させて頂きます。
主従のやり取りを視界から外し、オレらは炬燵へと移動した。
なんか知らんが、炬燵の上には煎餅と蜜柑が置いてあり、横にはポットとお茶が備えてあった。
「ダンジョンマスターって、こーゆーのまで出せんだな」
便利だな~とは思うが、欲しいとは思えん能力だな。でもまあ、あとでなにが出せるか聞いておこう。煎餅が出せるなら米も出せんだろう。ゴジル(味噌)を手に入れたら米が食いたくなったしな。
茶葉を急須に入れ、お湯を注ぐ。
イイ感じに急須を回してお湯と茶葉を混ぜ、茶碗に注いだ。
「あーお茶がうめー」
前世じゃ麦茶派だったのに、緑茶を旨いと感じる。やはり、前世の体と今世の体は違うみてーだな。酒も不味いとは感じるが、体にそれほど異変はねーからな。
「あー煎餅がうめー」
前は精神的に余裕がなかったから忘れてたが、今日は帰りに煎餅もらって帰ろー。
バリボリと煎餅をかじり、茶をズズズと飲んでると、主従漫才が終了したようで、やっとこちらにやってきた。
「す、すまんでござる。神が降りると止まらんのでござるよ」
アハハ。突っ込みませんわよ。
「ワリーなタイミング悪くてよ」
「……なにやら距離を感じる大人な対応でござる……」
「あー茶がうめー」
「見えない壁がそこにあるでござる」
ああ、それならオレにも見えるよ。〇〇フィールド級のな。
「あ、あの、べーさま。そろそろ話を……」
耐えられないのか、ぷるぷるとバンベルが入ってきた。
「ん、ああ。そうだな」
茶碗を炬燵の上に置き、結界術でこのマンション(ざっぱにな)を創り出した。
「……一時館でござるな……」
「ああ。このマンションだ」
二人(?)の視線(気持ち的に)を真っ向から受け止める。
「今後の計画を決めた」
気持ち、二人(?)が前のめりになる。
「地下に街を造る。そして、国にする。お前を王にする」
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