第130話 はい、今日は樵です
はい、今日木を伐りにきたオレです。
だからなんだと言う突っ込みはノーサンキュー。たんに言ってみたかっただけです。
朝食後、伐採の準備をして伐り場にやってきた。
うちの主生産物はラムノだが、本業はなんだと問われたら『なんだろな?』と答えるしかねー。
まあ、税は薪や薬師業で払ってはいるが、副業でやっている。商売をしてはいるがそれは趣味みたいなもの。本業だとは言えねーだろう。
いや、別にそんなことはどーでもイイんだよ。なにが言いたいかと言うとだ。木を伐ることを本業としている方々はとっくに働いているってことを言いたかったのだ。
伐り場に近づくにつれ、木を伐る音があちらこちらから聞こえてくる。
「がんばる父親はカッコイイね~」
ゴブリンやオーガのせいで伐り場が閉鎖になっていたのに、解禁されたら直ぐに再開する。
いくら生きるためとは言え、出るかもしれねーと言う恐怖を覚えながら家族のために木を伐る。ほんと、父親とは偉大である。
山小屋までくると、次世代(十二から十四歳くらいの少年ら四人)の樵が鉈や斧を手に薪を割っていた。
本来なら伐った木は、枝を払い、しばらくそこに放置してから細かく割り、背負子に薪を積んで山小屋に持ってくる。
が、鉄〇28号で木を伐採(粉砕?)して山小屋の横に置いたので、その処理をするために次世代の樵が割っているのだ。
「おう、やってるな」
働く少年らに挨拶をする。
同じ村の同じ山部落だから顔を合わす機会は多い。が、あんまり付き合いはねーんだよな。
だからってギスギスした関係ではねーし、仲が悪いってこともない。会えばこうして挨拶するし、おしゃべりもする。まあ、友達の友達と話す感覚に近いな。
「よぉ、べー。今からか?」
ザバルのおっちゃんの息子でこの集団のリーダー格たるハンガが気さくに挨拶を返してくれた。他は、頷くだけ。まあ、いつもこんなもんだ。
「ああ。今日は一日樵だ。また昼にな」
これと言った用も話題もないんで自分が受け持つ伐り場へと向かった。
一応、伐り場には道はあるが、獣道に毛が生えたようなもの。馬の背に薪を載せて運んだところが道になっただけだ。
結界術を使わず自分の足で移動しているからそれなりに時間がかかってしまった。
「いかんな。最近、結界ばっかり使ってるから体力が落ちたぜ……」
息切れするほどじゃねーが、ふぅーと息を漏らすくらいには疲れてしまった。
「五トンのものを持っても平気な体じゃなく体力強化か肉体強化にすればよかったぜ……」
農業も樵も力だけあればイイってもんじゃねー。スタミナも必要だし、繊細さも大事だ。体の動かし方一つでスタミナの減り方も違う。総合的な肉体を持ってなけりゃキツい商売なのだ。
「今日は体を動かすか~」
エアーチェンソーは封印し、持ってきた斧でやるこにした。
今日、やったくらいで体力がつくわけじゃねーし、継続は力なりとはわかっちゃいるが、前世の記憶が安易な考えに走ってしまう。オレ、情けね~~~!
「だが、後悔はせぬ!」
なんて意味不明なことを口走りながら伐採を開始した。
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