第129話 イイ一日でした

 秘密基地。


 とは言ってるが、別に秘密にしてる訳じゃねーし、家族は知っている。アリテラにだって存在は知られている。秘密な、とも言ってねー。


 まあ、進んでこの場所を教える気はねーが、聞かれたら答えるくらいの秘密だ。


 が、それはフェイクであり、ここは本当の秘密基地なのである。


 もちろん、家の造りは普通であり、これと言ったギミックはない。景色が自慢のスローライフハウスだ。


 本当の秘密は地下。暖炉を横にスライドさせると、地下へと続く階段が現れる。


 他にも地下へと続く隠し扉はあるが、基本はここから入るようにしてある。どんな力で見てるかわからんからな、まあ、保険だ。


 三十二段の階段を下ると、観音開きの扉が現れる。ここもシェルターとしての役目もあるのでかなり頑丈に造ってあり、オレかオレの結界(強化服的なもの)を纏ってなければ入れない結界を施してある。


 片方一トン近い扉を開け、中に入る。


 地下は三層構造になっており、ここは倉庫兼資材置き場として使っている。


 そのまま二十メートルほど進むと、二層階に続く階段が現れる。


 今度は螺旋階段を四メートルほど下りる。


 ここは、生活区であり寝室や風呂、作業場に実験室、運動施設がある。


 まあ、それらをノリで造ってはみたものの、頻繁にくるわけじゃねーから作業場くらいしか使ってなかったりする。


 今日きたのも作業場で道工具と資材の製作するためだ。


 作業場の広さは、だいたいバスケットコート一面分あり、結界で創った竃や溶鉱炉に、単純な工作機械があり、各種道工具が置かれている。


 まあ、ここもノリで創ったのでものは良くねーし、使ってはいねーが、こーゆーのは見た目だ。なんかスゲーと思えればイイのだ。


 いつもの場所に座り、家から持ってきた道工具を並べる。


 この時代じゃあ、たいした道工具はなく、道工具を作るための道工具を作らなくちゃならねーのだ。


 なんで今日はヤスリと砥石、ハンマーを作っていこうと思う。


 砥石は土魔法を使用するのでそう難しくもなければ時間も掛からない。粗めのから細かいのまで六種類百六十個を三十分で創り出した。


 続いてハンマーだが、これも同じ。土魔法で創り出し、結界で強化すればできあがり。


 大ハンマーから小ハンマーまで十種類百個を創り上げた。


 最後にヤスリだが、こちらは焼き入れして強度をあげ、結界プレスに掛ければできあがりだ。


 粗目から細目、大きいのから小さいのまで、三十種類二百四十二個を作り出した。


 いったいそんなに作ってどうするよと問われそうだが、こーゆーのはいずれ必要となるもの。その前に作っておけの精神で作っているのだ。


 一段落──と言うよりは終了と言った方がイイが、毛刈りしたときは、夕食はうちで出すので早く帰っても辛いだけだし、女衆の息抜きでもある。なんで男は遠慮するのが賢い選択──じゃなく、男の優しさ。どうぞ心いくまでおしゃべりくださいである。


 ちなみにトータは、朝から出ている。たぶん、狩りをしたり自分の秘密基地(オレに影響されたよーだ)で時間を潰しているんだろーて。


 まだ三時前くらいなので〇ンダムタイムで一息しながらどうするかを考える。


 まあ、やろうと思えばやることはいくらでもあるんだが、いまいちやる気が出ない。


 今世のオレはどうやら気分屋なので、気分が乗らないと動く気になれんのだ。まあ、乗ると見境がなくなるのが困ったちゃんだがな……。


「……あー、そろそろルククがくるころだっけ。飛行機の整備しておかなくちゃな」


 ふっと思い出し、一層階へと向かった。


 ここは、飛行場として造ったもので名を『エリア99』と言う(深くは突っ込まないで)。


 ファンタジーな今世に生まれたからには『空飛ぶ船は欠かせないよね』と造った場所であるが、造船技術などまったくねーじゃんと気が付いたのはここを完成させた直後。まったく以てアホなオレである。


 が、造ったからには一度は使ってやるのが創り手の義務──とばかりに、ノリと勢い、そして、サプルの空を飛んでみたいとの言葉で飛行機を作っちゃいました。


 もちろん、前世のような飛行機じゃねーよ。そんな知識もなけりゃ技術もねーもん。


 が、今世には土魔法があり結界術がある。そして魔術がある。それらを組み合わせれば飛行機など難しくくもない。


 土魔法で軽金属で形を創り、浮遊石(さすがファンタジーな世界。浮遊島がありやがった。それをザンバリーのおっちゃんに頼み手に入れてもらい土魔法で創り出したのだ)を機体の重さがゼロになるように配置し、風の魔術を結界内に放ち、圧縮して吹き出す仕組みを設定させる。操縦の仕組みも結界でやれば難しくもない。まあ、操縦するのは訓練が必要だがな。


 もっとも、この飛行機に乗るのは我らがサプルちゃんだけ。あの天才幼児に掛かれば飛べる豚も真っ青。本職(今世で空を飛ぶ職業は竜騎士。ラーシュは竜騎士じゃなく竜使いで、一人と一匹で飛竜を倒したんだってさ)にも勝る操縦をしちゃったりする。


 まあ、オレは飛行機よりルククに乗る方がロマンを感じるので創るだけ。そして、整備するだけである。


 浮遊石の原理はまったくわかんねーが、浮遊力は永久的なものじゃなく、しだいに浮遊力をなくして行き、終いにはタダの石へとなるので、定期的(拳大で半年は持つ)に交換しないとならんのだ。


 浮遊石を固定するハッチを開き、土魔法で創り出した新しい浮遊石と交換して行く。


 あと、新装備としてヘキサゴン結界を追加。攻撃と防御をできるようにした。


「ま、こんなもんか」


 大して時間を要しなかったが、そこそこイイ時間を過ごせた。あとは、見晴台で本でも読んで過ごすか。いろいろ溜まってるしな。


 その日は、陽が沈むまで読書し、イイ一日を過ごせたことに感謝して家へと帰った。

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