第124話 ピンとこねー
町から港に戻ると、駐在兵(老兵)たちが忙しく泳ぎ回っていた。
一応的に領主館には牢屋は造ったが、六畳ほどの小部屋を二つ造っただけ。とてもじゃないが、五十人以上の魚人は収容できない。
まあ、偉いヤツが何人(匹と言ったら侮辱されたと怒られるから注意しろよ)いるか知らんが、まあ、人数が人数だし、そんなにいないから大丈夫だろう。
邪魔にならないよう端っこを移動し、我が店に入る。
造りも強固であり結界を張っているから被害はねーと思うが、持ち主としては確認するのが義務。つーわけじゃねぇが、まあ、せっかくきたから品出ししようと思って立ち寄ったまでだ。
結界で店内の海水を一度外へと追い出す。
埃は溜まらねーが、閉めきっているので海水が濁るのだ。しかもプランクトンの死骸は病気のもとと言われているそーで、定期的に海水を入れ換えしないとならんのだ。
海中での生存結界はそのままに、空になった棚に商品を補充していく。
あ、ちなみに収納鞄をかけてきました。
前にも言ったが、これと言ったコンセプトがあるわけじゃねーし、テーマがある訳でもないので商品は適当だ。
サプルが思いのままに、無軌道に作った皿やカップ、陶器人形、クシや手鏡、髪飾り、ナイフ、三ツ又の槍、薬草などを感じるままに置いていく。ちなみに結界処理はしてあります。
店が狭いのでそれほど手間はかからんかったが、〇ンダムタイムしてたらお昼近くになっていた。
「……家に戻んのもメンドクセーし、ここで食うか」
オレが熱中すると時間を忘れて没頭することはオカンたちは知ってるし、まただねとか言って流してくれる、はず。なんかもう常習犯ですみません!
収納鞄からこんなとき用の弁当箱を取り出した。
中身はパンケーキにハチミツを掛けたものとソーセージやゆで卵が二つ。野菜スープだ。
できあがった状態で結界で封じるので、温かさも香りもバッチグー。ほんと、サプル、マジ天才。
感謝しながら食っていると、店の入り口に門番をしている兵士が現れた。
「ベーさま。お食事のところ申し訳ありません。ウルさまがきて欲しいとのことです」
「あいよ。食ったらすぐいくよ」
「わかりました。そう伝えます」
「すまねーな」
まずはサプルの料理を食うのが最優先。他は二の次だ。
しっかり美味しくいただき、そして感謝のご馳走さま。コーヒー(モドキ)を一杯飲んでから店を出た。
外ではまだ常駐兵が忙しく泳ぎ回っており、まだ通常を取り戻すには時間がかかりそうだった。
そんな光景を横目に領主館へと入る。
外と同じく領主館の中も慌ただしく、文官の人魚らが右へ左へと泳ぎ回っていた。
人魚の泳ぎは荒いので結界で海水を押し退け、ウルさんの執務室へと向かう。
「ウルさん、来たぞー」
「申し訳ありません。お呼び立てしまして」
水晶玉に魔力を注いでいたウルさんが立ち上がり、ソファーへと勧めてきたので遠慮なく座った。
「で、なんの用だい?」
うん? そー言やぁ、あんちゃんいねーな?
「はい。実は、先ほど捕まえていただいた帝国兵のことなのですが、その中と言いましょうか、ベーさまを侮辱したものが第六皇子であることがわりました」
「ふ~ん」
「……興味、なし、ですか……」
「ねーな。つーか、ピンとこねーな」
ハルヤール将軍とは気は合うし、話も通じるが、国だ貴族だなんて出てこなかった。出てくるのは冒険譚や萌え話、あとはバカ話だ。そもそも海ん中の権力闘争なんてどーでもイイわ。
「んで、その皇子さまがなんだって言うんだ?」
「はい。捕虜としての待遇を要求しております」
……はぁ?
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