第67話 武器庫3

「じゃ、じゃあ、あたしもなんかお薦めしてよ!」


 今度は斥候系ねーちゃんが言ってきた。


「いや、ねーちゃん、イイの腰に差してじゃん。それ、魔剣だろう?」


 なにやら強い魔力を感じるぞ。まあ、性能までは知らんけど。


「そ、そうだけど、あたしもなんか欲しいっ!」


 二十歳過ぎの女が、んなガキみたいなこと言ってんじゃないよ。


「ってもな~、ねーちゃんに薦められんのは投げナイフくらいしかねーぞ」


「え~投げナイフぅ~」


 露骨に嫌そうな顔する。まっ、これが一般的な冒険者の態度だわな。


「バーニス。あなたはまだベーの非常識を理解してないの? ただの投げナイフな訳ないでしょう」


 ねぇ、アリテラさん。それ、褒めてんだよね? 貶してたら泣くよ、オレ。


「ま、まあ、ただの投げナイフもあるが、ねーちゃんみたいな斥候や追跡、遊撃担当にはコレだな」


 武器置場に積んである木箱から魔術付与(結界封印)された投げナイフを取り出した。


「この投げナイフには炎──そうだな、さっきサプルが撃ったもんと同じ威力の炎が付与されている」


「ふ、付与魔術ぅっ?!」


 魔術師系ねーちゃんが驚きの声を挙げた。


「魔術付与だか付与魔術かは知らねーが、ちょっと独特でオレのオリジ──独自の方法なんでな、説明は省くぞ。まあ、この投げナイフ──名前がねーのもなんだから……そうだな"クナイ"って 名づけっか」


 これは矢印型だが、次回からはやはりクナイ型にしよう。やっぱりクナイはロマン(突っ込みはノーサンキュー)だろう。


「クナイ。なんかわかんないけどイイ響きだわ」


 どうやらロマンを理解できる素質(?)があるようで気に入ってくれたよーだ。


「んで、こっちのが冷気を付与したもんだ。威力としてはオークくらいなら凍り付けにできるな」


 別の木箱から投げナイフ──じゃなくてクナイを出して斥候系ねーちゃんに渡した。


「見た目は同じだが、一応わかるように番号を刻んであるから間違えんなよ」


 相手に悟られないように普通の投げナイフと同じにしてあるが、間違い防止のために番号を刻んだのだ。


「二番に三番って、一番は?」


「ああ、一番は人気があってな、品切れだ。ちなみに一番は雷だ。威力としてはオーガを痺れさせるくらいだな」


「ふざけてるわね」


 魔術師系ねーちゃんが突っ込みを入れてくるが、この世界には竜もいれば怪獣(見たことはねーがな)もいる。オーガなんて魔物としては中の下。人間でもC級の冒険者ならなんとか勝てるし、勝てなきゃ冒険者稼業なんてやってらんねーよ。


「四番は炸裂で五番は閃光。六番に毒ってのがあるんだが、いまいち不人気だな」


 オレとしては毒が一番のお気に入りなんだが、どーゆー訳かまったく売れないのだ。結構使えるんだぜ、毒って。


「まあ、ねーちゃんの戦闘スタ──戦闘手段がわかんねーからなにがイイとは言えんが、使いこなせればオーガの群れでも相手できると思うぞ」


「おおっ! スゴいじゃないの! 気に入ったわ! これ頂きよ!」


 喜ぶ斥候系ねーちゃん。そりゃなによりだ。


「あ、でもそれ、使いきりだから注意しろよ。魔術が発動しても投げナイフは残るし、使えるが、付与されてんのと区別つかねーから気を付けろよ。まあ、回収した用のケースを作るなりして、再利用するなり売るなりしてくれや」


「でも、これを全て持つのは無理なんじゃない? 結構な重さになるわよ」


「問題ねーよ。専用のケースがあるから」


 まあ、専用ケースもいろいろ作ったので斥候系に作ったものをその他置場から持ってきてねーちゃんに渡した。


「このベルト巻いてみな」


 そう言って斥候系ねーちゃんにベルトを巻かせる。


「んで、そのケースにクナイを押し込んでみな」


 手にしていた炎のクナイをベルトに付いたケースに収めた。


「え?」


 ケースの中に消えてしまったことに目を丸くする斥候系ねーちゃん。


「収納鞄の応用だ。ベルトにケースは八つ。一つに最大百。八つだから全部で八百本は入るぞ」


 多いわっ! って突っ込みをプリーズです。ネタで作ったからな(でも、妥協はしてない作りとなっておりますので使い勝手はイイと思いますよ)。


「……ほんと、常識が崩壊しそうだわ……」


 まあ、その先に新しい世界があることを切に願うよ。うん……。

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