第66話 武器庫2

 ──聖銀せいぎん


 この摩訶不思議金属は、神の鋼とか魔法金属とか呼ばれ、魔力が満ちる場所でよく発掘されるそーな。


 時代が時代なので詳しいことはわかってないが、加工技術は千年以上あるとかで、それなりには普及されているらしい。聖騎士や名のある冒険者はだいたい聖銀の剣を愛用しているってよ。


 この国にも聖銀の鉱脈が二ヶ所あり、国の管理のもと、厳しい法規制が掛けられているんだと。


 まあ、それは国が認めた鉱山から出た聖銀だけであり、他から出たのや他の国から入ってきたものは勝手に売買されてるらしい。まあ、この時代じゃ法なんて大雑把ザル。細かい決まりなんて作れる訳もなければ守る訳でもない。


「じゃあ、あんまり出さない方が無難だな」


 問題ないとは言え、この山から聖銀が出たとなったら国に取り上げられるばかりか、オレのスローライフも奪われ兼ねない。黙ってるのが吉だな。


「そうね。わたしたちも深く聞くのは止めた方がいいわね」


「同感だわ」


「そうね、言ったら最後、あたしたちの未来も暗黒に染まりそうだわ」


「ベーならなんとかしそうだけど、わざわざ騒ぎにすることもないわね」


 話のわかるねーちゃんたちで助かるよ。


「んじゃ、その剣はいらねーか?」


「正直言えばもの凄く欲しいけど、わたしの腕ではまだ使い切れないわ」


 素人が作ったものでも聖銀製ってだけで格があがるのか。ファンタジー金属スゲーな。


「なら、この剣ならどうだ? 通常より細いが、ちょっとした魔法加工してあって三倍くらい強度を増してある。あと刃も欠け難くなってるぞ。もっとも、許容を超えたら魔法加工はなくなるけどな」


 これも結界術の実験でわかったことだが、結界の強弱は別として、魔法(魔術)でも結界を砕くことは可能であり、物理的衝撃でも破壊はできるよーだ。


「この細さと軽さで三倍も強度があるの?」


「ああ。なんなら試してみるか?」


 言って初期に作った剣を一本取り上げ、横にして掲げた。


「打ち込んでみな」


「え? でも……」


「構わんよ。力だけならねーちゃんに負けんからよ」


「そうよ、トコラ。ベーに常識は通じないわよ」


 アリテラさん、あなた結構辛辣ですよね……。


 じゃあと、騎士系ねーちゃんが構え、さすがと言いようがない一閃を見せた。


 キンっと言うイイ音がして持っていた剣の刀身が真っ二つとなる。


 ……なんか意味ねーと思うのはオレの気のせいかな……。


「……凄い……」


 が、騎士系ねーちゃんには結界加工した剣の凄さがわかったらしく、手に持つ剣の刃先を見詰めていた。どうやら気に入ったようだな。


「ね、ねえ、ベーくん。わたしに合う武器はないかしら?」


 と、魔術師系ねーちゃんが聞いてきた。


「魔術師に武器? ねーちゃん、なんか使えんのか?」


 魔術師はだいたい魔力増幅の杖か殴打用の樫の杖を持つのが基本、っうかそれ以外見たことがねーぞ。


「あ、いや、使えないんだけど、ベーくんならあるんじゃないかと思って」


 なんだそれはと突っ込みを入れようとしてとある杖のことを思い出した。


「武器じゃねーが、防御用の杖ならあるぞ」


「防御用の杖?」


「ああ。うちによくくる行商人のあんちゃんに頼まれてな、防御幕を生み出せる杖を作ったんだよ。確か、この辺りに置いたはずだが………」


 村の年寄り連中に頼まれて杖と一緒に置いたはずなんだが……おっ、あったあった。


「これだよ」


 長さ一・二メートル。それっぽく海竜から取れた水色の魔石を嵌めた堅樫の木の杖を差し出した。


「見た目は悪いが、結構優れもんだぜ」


 自分を中心に一面から全面まで自由に結界を張れ、土竜(モグラじゃないよ)の突進にもびくともしねーし、魔術攻撃も防ぐ。


 しかも、全面囲んでも窒息はしないどころか人体に悪影響を及ぼす毒やら悪臭をシャットアウトしてくれるのだ。ほんと、結界超万能だぜ。


 オレの説明に頭が追いついてないようだが、杖を見詰める姿からしてお買い上げ決定だな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る