第65話 武器庫1

「ベーくん。武器を売ってくれないかしら」


 あ、そー言やぁ、そんな約束してたっけな。


 昨日、帰ってきから武器を売ろうとしたのだが、アリテラにもらったカランコラに夢中になりすっから忘れてしまってたよ。


 ねーちゃんたちも忘れていたらしく、今朝になって言ってきたんだと。


「んじゃ、ついて来てくれ」


 そう言ってねーちゃんたちを武器庫に連れてった。


 武器庫の広さはだいたいテニスコート一面分。幾つかある倉庫では一番広いトコロだ。


 まあ、拡張ありきの保存庫なので同じ広さの倉庫は一つもない。造りも違う。


 武器庫も最初のうちは六畳間くらいで、適当に置いてたのだが、土魔法の練習(才能なので練習せんと上達しないんだよ)で山から鉄や銅、ファンタジーな金属を集め、混合したり分離したりといろいろ試し、剣やら槍やらを作っていたらあら不思議。六畳間に入りきれないほど作っていた。


 しゃーねー倉庫を拡張するかと、六畳間を倍にしたあら不思議。二日にして一杯になってしまった。


 拡張拡張で四日目。テニスコート一面分になってやっと作り過ぎに気が付いた。はい、バカなオレですがなにか?


 まあ、隊商の護衛をする冒険者や村のもんに護衛用として配って半分は減らしたが、まだ武器庫の半分を占めていた。


「まるで要塞の武器庫ね」


 まるで要塞の武器を知っているかのように突っ込みはスルーさせて頂きます。


「まあ、適当に見てくれや」


 無計画に作りはしたが、整理整頓はしてある。武器は武器置場。防具は防具置場。小物類は小物類置場。その他はその他置場に区画してある。


 ねーちゃんたちがそれぞれに動き出し、いろいろ手に持って確かめて行った。


「剣や槍はどれもいまいちね」


「まあ、素人が作ったもんだしな」


 剣や槍は初期に作ったもの。見習い冒険者ぐらいにしか売れん出来栄えだ。


「でも、防具はなかなかね。この鉄の盾なんて騎士団でも持ってないわ」


「あ、それ鉄じゃなく白銀鋼はくぎんこうだよ」


 そう訂正したら光より早く振り向く騎士系ねーちゃん。


「……は、白銀鋼って、あの白銀鋼……?」


「あのがなんなのかは知らねーが、白金と銀金を合わせたもんだな」


 前に冒険者から白銀鋼の剣を見せてもらい、似たようなものを大地から集めたらあら不思議。結構な量が集められた。もちろん、合わさった形で、だ。


 それで一度見た(触れたかな?)ものは集められることがわかり、また調子に乗って百以上も作っちゃいました。テヘ☆


「よくもここまで作ったものね……」


「ねぇ、こっちの鎧も白銀鋼なの?」


 盾の横にある木箱に入ってた鎧を出した斥候系ねーちゃん。


「ああ。試しに作ったもんだから実用性はないがな」


 さすがに鎧の構造は知らねーから完全な趣味(前世で子供の頃に見たロボットアニメを真似たもの)に走った。まあ、置物にイイかなとそのままにしてるのだ。


「じゃあ、この帷子も白銀鋼?」


「ああ。それは会心のできだな。軽くて継ぎ目もないから着心地はイイと思うぞ」


 トータにも着せてるが、不満は言われたこともねーし、毎日着てるから実用性も申し分ないはずだ。


「ねぇ、この杖はなんなの?」


 魔術師系ねーちゃんが武器置場から一・五メートルくらいの杖──棒を掲げて見せた。


「そりゃ槍の柄でもあり、戦棒でもあるやつだ」


「槍の柄はわかるけど、戦棒ってなんなの?」


「まあ、杖術ってあんだろう。あれの棒版だ。極めたら剣士にも負けねーぞ」


 信じられない顔をするアリテラ。


「棒だからって侮んなよ。それは堅樫の木から削って秘伝の加工をしたもんだ。白銀鋼の剣でも傷一つつかねーぞ」


 加工とは結界のことだがな。


「は、白銀鋼の剣があるの?!」


「あ、いや、去年まではあったんだが、売っちまったからねぇんだ。ワリーな」


 白銀鋼製のもんは人魚族に回す約束なんで、ねーちゃんらに回せねーんだよ。


「……そうなの、残念だわ……」


「代わりと言っちゃなんだが、これはどうだ?」


 先日、倉庫を拡張してたらでてきた謎の金属で作った剣(日本刀をちょっぴり西洋風にしたもの)を出して騎士系ねーちゃんに渡した。


「魔力伝導がイイ上に軽いからねーちゃんみたいな女が使うにはイイんじゃねーか?」


 魔術で軽くする方法もあるらしいが、オレにはできんし、結界でできるから興味はねーよ。


「──せっ、聖銀せいぎんですって!?」


「はぁ?!」


「ウソ!?」


「……ベーならなんでもありね……」


 驚いたり呆れたりするねーちゃんたち。それより聖銀ってなんだ?

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