第59話 知らねーし、興味もねー

「ありがとう、あんちゃん!」


 注文通りの収納鞄ができたようで、サプルが満面の笑みを見せた。


 やれやれ。結構時間が掛かったぜ。


 ただの収納鞄ならそれほど難しくはないんだが、サプルが要求してきた収納鞄は、『運べる台所』である。


 調理道具はもちろんのこと、調味料類に食材(は百人分入る容量)、食器類になぜかテーブルや椅子各種まで入るものを要求してきたのだよ。


 超便利な結界であるが、設定づけするのかメチャクチャ大変なのである。


 どこになにがあるか、選択したものだけを取り出せ、サプルだけにしか使えないようにする。まあ、もっと細々な設定しているのだが、要約したらそんな感じだ。


「……はぁ~疲れた……」


 これが魔力で行ってたら想像を絶する量を使用していることだろう。マジ、不思議パワーに感謝である。


「……む、無限袋ですって……!?」


 フードのねーちゃんが驚愕した呟きを漏らした。


 おや。よくわかったこと。


 この世界には無限袋なる四次元ポケット的な魔道具がある。


 まあ、話に聞いただけで実物は見たことはねぇが、聞いた話じゃあ、超が付くほどの魔道具であり、作れるヤツは世界で三人しかいねーそうだ。作るのにも時間がかかるし、値段だって金貨一万枚とか売る気ゼロだろうと突っ込みたいくらいするそーな。


「え? 無限袋?」


「うそっ!? ただの鞄じゃなかったの?!」


「アリテラ、本当なの?!」


 いつの間にか他のねーちゃんたちも集まっていたようで、皆、わたわた驚いていた。


「魔力は一切感じなかったし、ただの鞄に見えるけど、バリアルの街で見た鞄と同じだわ」


 バリアルの街となると、ジャックのおっちゃん(薬師の兄弟子だ)か。そー言やぁ、薬草の在庫が切れそうだったっけ。また頼まないとな。


「残念ながらオレの作ったのは無限袋じゃねーよ。量は決まってるしな」


 オレの想像した力では今作った収納鞄が精一杯。無限とか想像できねーよ。


「……それでも異空間に大量のものを入れられるのでしょう?」


「んー。荷馬車二台分かな?」


 鞄では、だが。


「それも売ってくれるの?」


 フードのねーちゃんが迫ってきた。


 と、フードの奥に隠れていたとんがった耳と黒色の目が見えた。


「ねーちゃん、ハーフエルフだったのか」


 純粋なエルフの瞳の色は緑が基本。氏族に寄っては薄緑や黄緑もいるが、黒目はいない。いるってことはハーフってことだ(某エルフの狩人談)。


 なるほどな。道理で魔力が高い訳だ。エルフ(ハーフでも)って言やあ、魔力が高いので有名だからな。

「……あなたも気持ち悪いって言うの……?」


「はあ? なんで気持ち悪いんだ? ねーちゃん、結構美人じ

ゃねーか」


 ひ──集落から殺気が──いや、うん、美人サイコー! それだけで正義だよねっ。


「まあ、人の好みはそれぞれだし、場所によっては美人の定義も違うし、そう気にすんなって」


 オレの慰めが悪かったのか、フードのねーちゃんがその場から駆けてってしまった。


「オレ、なんか悪いこと言ったか?」


 イイことも言ってないがな。


「ベーくんは、ハーフエルフの立場がどんなものか知ってる?」


「知らねーし、興味もねーな」


 そんな細かいこと言ってたら異種族交流などやってられんよ。


「……ベーくんって、結構、男前よね……」


「そうね。十歳なのが惜しいわ」


「さすがザンバリーさんが絶対の信頼を寄せる子だわ」


 なに言ってんだかさっぱりなんだがな?


「それより、あのねーちゃんほっといてイイのか?」


 もう姿が見えんのだが。


「平気よ。あの娘単体ならB級だからね」


「ちょっとやそっとでは殺されないわ」


「お腹が減ったら帰ってくるでしょうよ」


 ねーちゃんら、ほんとに仲間なのか……?

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