第42話 今日生きられた奇跡に感謝を

 たぶん十時半くらいだろうか、いつもならベッドに入っている時間だが、今日はお客がきたからこんな時間となってしまった。


 結界により光を集める手段はあるが、基本、ド田舎は早寝早起きである。


 オレもいつもなら八時くらいにサプルやトータにお伽噺話を聞かせたら九時過ぎくらいには寝ている。


 中身は五十も半ばだが、この肉体はまだ十歳の子供。十時も過ぎれば眠くなる。


 このままベッドに飛び込みたいところだが、朝の習慣同様夜には夜の習慣が三つあるのだ。


 我が家は一応、三部屋あるが、まだサプルもトータも小さいのでオカンの部屋で一緒(四人用のベッドで)に寝ている。


 まあ、自分の部屋があるのだが、基本的にオレの居場所は暖炉の前。そこが一番落ち着く場所なのだ。


 暖炉に火をくべ、暖まったところで棚から箱を取り、テーブルに置いて中から紙と羽ペン、そしてインクを出した。


 この紙はラーシュから頂いたもので、毎日の習慣──と言うか、日課としている日記をつける。


 これは今世からの日課であり、ラーシュへと送るものである。


 まあ、そんな大したことは書いてないが、今日なにがあったかを書いているくらいだ。


 なのでそんなには時間はかからない。かかったとしても二十分くらいだろう。


 手紙を箱へと戻し、棚に置く。


 冷蔵庫から羊乳が入ったビンを持ってきて、ポットに注いで火にくべる。


 イイ感じで温まったらカップへと注いで口に付ける。


 これは前世からの習慣であり、寝る前に羊乳(前世は牛乳だったが)を温めて飲むと良く眠れるのだ。


 二杯飲み干し、胃に落ち着くまで今日のことを思い出しながらまったりする。


 やがて眠気が襲ってきたら速やかに部屋へとゆき、三人を起こさないようにベッドに潜り込む。


 どこかのメガネ少年ではないが、オレもお休み三秒で眠りに付ける。なので、眠りに落ちる前に今日最後の習慣を実行する。


 今日も生きられたことに感謝を籠めて。


 ありがとうございました。


 これでオレの一日が終わり、また素晴らしい明日がやってくるのだ。

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