第31話 はぁ? だよ、ほんと……

 小屋(工房)を出ると、村長と若いあんちゃんがいた。


 見た感じ、三十前のやり手の若番頭って感じだ。まあ、オレの勝手な感想だが。


「どうしたい、村長?」


「いや、こちらの方がお前に用があるそうだ」


「オレに?」


 首を傾げながらあんちゃんを見る。


「初めまして。わたしは、ラージエル。バジバドル商会のものです」


 村長にどんな説明をされたから知らねーが、ガキ相手に丁寧なこった。


「そりゃどうも。オレの名前はちょっと言いづらいからベーでもイイよ」


 オトンがつけてくれたキラキラネームは言い難いから、オカンでもオレをベーと呼んでいる。


 ……オトン、なぜ誰も言えないキラキラネームをつけたんだ……?


「気にせんでくれ。わしもベーの本当の名を何度聞いても覚えられませんからな」


「は、はぁ……」


 オレももうベーでイイんじゃないかってくらい本当の名前を口にしてないしな。


「そんで、オレになんの用で?」


 戸惑うあんちゃんに先を促した。


「そ、そうでした。単刀直入に申します。馬と馬車を譲っていただけませんか?」


「はぁ?」


 なに言っちゃてんの、この人は?

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