第30話 海産物商
「そんじゃ、様子を聞いてくる」
「ああ、商人相手に軽々しく約束すんなよ。わかんねーときは長老衆と相談すると言って逃げてこいよ」
「ああ、そうするよ」
商船へといく村長にアドバイスを送り、オレは商船がいるのとは反対の砂浜と岩場の境に向かった。
そこにはオレが所有する小屋(作業場)がある。
税は村一括で払うので、土地や建物には税は掛からず、村長の許可とその部落が許してくれればどこになにを建てようが構わないのだ。
まあ、小屋と言っても半分以上は石でできており、小屋と言うよりは工房と言った方が正しいかもしれないな。
そんな工房では岩場で獲れた貝類を焼いて、粉になるまで磨り潰して肥料を作ったり、または塩を作ったり、去年からは魚醤を試みている。
漁は体力勝負の仕事なので子供や老人は出られず、水揚げしてからの仕事しかできないのだが、魚の捌きや干し方は女衆の仕事。大漁時ぐらいしか仕事に混ざれない。
まあ、集落に手伝いにもいくこともあるが、毎日ではない。子供なら遊ぶことができるが老人は海を見てぼ~っとしてるしかない(それはちょっと言いすぎだがな)。
そんな労働力を腐らすのはもったいないと、八歳のときに小屋(工房)を造り、海産物商 (もぐり)を立ち上げたのだ。
うちの村沿いには街道があり、村外れには峠を越える前や越えてきたための休憩地があるので、よく隊商が泊まるのだ。
そこで海の幸や山の幸、護衛の冒険者や傭兵に革靴や投げナイフ、革バックなどを売っている。
まあ、本格的にやっている訳ではなく、ガキどもや老人が暇なときにきて勝手にやってくれ程度にやっているものだ。
今日は、と言うか、だいたいは 八歳のリブと十二歳のダリ、六十過ぎのジジババが、四人いる。
「ご苦労さん。調子はどうだい?」
中に入り、挨拶する。
「おう、順調だよ」
アマリアばーちゃんが代表して挨拶を返してくれた。
「今日はなにができてる?」
「今日は肥料ができてるよ」
「もう溜まったのかい?」
前は二十日前くらいかかったのに、今回は十五日でできてしまったとは。慣れてきたのかな?
「ああ、イイ場所があったんでね、大漁に獲れたんだよ」
「それはよかった。でもまあ、無理はすんなよな」
なんて世間話していると、村長がやってきた。
「すまん、ベー。ちょっとイイか?」
やれやれ。もうかよ。
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