第23話 専属冒険者

 当然のようになんの役にも立たないサリバリとの薪下ろしを終えて集落にくると、冒険者ギルド(支部)へ向かっているだろう冒険者パーティーが目に入った。


 開拓中の村か小さい村は別として、だいたいの村には冒険者ギルド(支部)がある。


 剣と魔法の世界の例に漏れず、この世界には魔物や魔獣がばっこし、魔境や秘境がいたるところにある。


 この村だって常に魔物の危機に晒され、人の侵入を拒む山や森がある。


 大きな街ならゴミ拾いと言った雑用から薬草摘み、隊商の護衛など、多岐に渡り仕事があるが、こんなド田舎では殆どが魔物(害獣)退治の依頼で、たまに畑や漁の手伝いがあるくらいだ。


 そんなんだから冒険者がこの村へ来ることは滅多にない。来たとしても通過点として物資の補給をするくらいだ。


 とは言え、村に軍隊や警備隊がいるわけでもねー。まあ、青年団はあるが、基本、火番だ。魔物と戦える術は持ち合わせていない。


 ならばどうやって村を守るか? 次男や三男、たまに男勝りな次女や三女を冒険者とし、村専属にすればイイじゃないと、狡猾な大人たちは考えたわけだ。


 まあ、次男や三男も家を継げるわけじゃねーし、魔物退治で名を上げて出世をした方が希望が持てると、結構なるヤツは多いのだ。


 現在、この村の専属冒険者は九人。二つに分かれて活動している。


 どちらのパーティーも十三から十八歳までの若者だ。


 それ以上の年になると実力がつき、この周辺の魔物では手応えがなくなり村を出て行くので、だいたいその年代になるのだ。


 今、オレの視界に入っているパーティーは、十三から十五歳で結成された新米パーティーだ。


 リーダーは十五歳のバン。冒険者歴二年で剣士。同じく十五歳で斥候職兼短剣使いのガバ。紅一点で十四歳のタシアは弓使い。最年少のアルマは荷物持ち兼見習いだ。


「お~い、バン兄~!」


 ちなみにバンはサリバリの兄貴(次男)だ。


「ん? サリバリか。お前また抜け出してきて、お袋にしかられても知らないからな」


「大丈夫。ベーと一緒だから」


 オレの胃は大丈夫じゃないがな。


「今日はなんの依頼だい?」


 魔物(害獣)退治が基本依頼とは言え、バンたちはまだ新米パーティー。魔物(害獣)は任せられないのだ。


「ゴブリン退治さ!」


 たぶん、ゴブリンの耳が入った袋を掲げて見せた。


「へー。よく支部長が許したな」


 叩き上げの冒険者(右足をなくして引退してはいるがな)だけあって、新米の教育にはとっても厳しい。オレにはもっと厳しいが。


 弱いゴブリンと言えども経験のない新米にさせたりはしない。黒鼠(四十センチくらいで山の掃除屋と呼ばれている雑魚な魔物だ)や角鹿を余裕で狩れるようにならなければ許可を出さない人だったのにな。


「まーな。最近、ゴブリンの目撃情報が多くてな、ダッカルさんらのパーティーだけでは手に負えないからオレたちにも討伐許可が出たんだよ」


 やはりゴブリンの大群が近くにいるようだ。明日には山に入ってみる必要があるな。


「何匹仕止めたんだ?」


「三匹だ!」


「こっちからきたと言うことは、ザッカラ山でか?」


 トータが見た山だ。


「ああ。なかなか手強かったぜ」


 まあ、トータのような能力を新米に求める方が間違いで、この年代でゴブリン三匹を倒したのは結構凄いことなのだ。


「ほ~。無傷で倒してくるとは凄いじゃないか。どうやったんだ?」


 本当に凄いことなので素直に賞賛する。


「ガバが先制攻撃して、慌てたところにタシアの一撃。乱れたところをオレが一殺さ!」


 まあ、基本だな。


「ゴブリン三匹なら銅貨六枚か。余り儲けにはならんが、初討伐の勲章と思えば一生の宝だな」


 最初の討伐で死ぬことも珍しくない冒険者稼業で初討伐を勝利で飾ることができたのだから幸先がイイってことだ。


「ったく、十歳のクセに生意気なこと言うよな、お前は」


 しゃーないだろう。人生経験がお前の三倍はあるんだからな、とは言えないので苦笑いで誤魔化した。


「でもまあ、お前には感謝してるぜ。お前が作ってくれた弓矢や投げナイフのお陰で一殺できたんだからな」


「それは日頃の訓練の賜物さ。どんな優れた武器も持ち手次第。下手なヤツにどんな優れた剣を渡しても当たらなければナマクラ包丁以下。その勝利は努力したお前らが勝ち取ったものだ」


 冒険者になる気はないが、こう言う熱い生き方しているヤツを見るのは大好きだぜ。

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