第24話 次世代の冒険者たち

「ガキんちょども」


「あんただってガキんちょじゃない」


「まじめにやってるようだな」


 サリバリの突っ込みは全力で無視。冒険者ギルド(支部)の横の広場で訓練している次世代の冒険者に声をかけた。


 冒険者ギルド登録は十歳からだが、見習いとしてなら八歳から仮登録ができる。


 もちろん、危険な討伐は不可だし、薬草摘みも不可だ。その期間で可能なのは家の手伝いレベルのことしかできない。


 まあ、言ってしまえば子供の小遣い稼ぎではあるが、将来冒険者となる者としたら大事な準備期間。初歩の薬草摘みでも最低限の装備は必要だし、冒険者となったらたとえ十歳でも一人前と見なされる。


 そうなれば家を出なくてはならないし、パーティーを組むなら報酬はパーティー財産となり、一人前に稼げるようになるまでは無賃金状態になる。


 もちろん、村の専属なのだから住む家は支給(救済措置)され、雑貨屋や市(露店)では割引(雑貨屋は二割引。市や露店は売主次第)される。


 だから見習い期間と言えど、甘いことは言ってられない。稼げるならなんでもするし、訓練も怠らない。なんせ、努力した結果が直ぐそこにいるのだからな。


「あ、兄貴。ちぃーすっ!」


 この中で最年長でリーダー格のシバダが真っ先に反応した。


 シバダはオレの一個下で九歳。同じ山部落の出身だから幼馴染みと言っても良いのだが、こいつが物心つくころから面倒見てたので完全に弟──いや、舎弟のようになっていた。


 だからと言って『おい、パン買ってこいや』ってな関係ではない。サプルやトータ並みではないが、魔力があり、風の魔術に適性があったから教えていたのだ。なので舎弟と言うよりは弟子と言った方が正しいかもしれないな。


「調子はどうだ?」


「はい。風手裏剣は的に当たるようになりました」


 やっぱり弟子にするなら凡人がイイよね。できないながらもがんばる姿は見ていても気持ちがイイし、教え甲斐があるってものだ。


 ……サプルやトータにしっかり教えたら三年で抜かれる自信があるね……!


「ああ。お前はやればできるヤツだからな。驕らず、怠らず、日々努力したら一流の冒険者になれるよ」


 基本、オレは褒めて育てるタイプなのだ。


「はい、兄貴!」


「皆も日々の努力を忘れるなよ」


「「「はいっ!」」」


 ほんと、素直でええ子たちだよ。


「あ、そうだ、兄貴。兄貴に依頼されてた花壇、できたよ」


「もうできたのか、早かったな」


 冒険者ギルド登録は年齢制限があるが、依頼料を払えるなら依頼者に年齢制限はないのだ。


「報酬がクッキーだから嫌でも集まるよ」


 そーいやぁ、前も子守りのガキんちょ(四歳)まできて大変だったとか言ってたっけな。


「まあ、人を使うのも勉強だ。創意工夫しながらガンバレ」


 馬車からクッキーの箱を二つ出してジバダに渡した。これは別報酬だ。


「じゃあ、今度は花を植える依頼だしておくから受けとけよ」


「いつもありがとうな、兄貴!」


「別にオレのために依頼出してんだ、感謝するのはこっちだよ。小銅貨五枚で働いてくれんのはお前らだけだしな」


 街道沿いの横に三十メートルくらいの花壇を五百円くらいで依頼し、更に年下のガキんちょどもにはクッキー四枚でやらせているのだ、前世なら児童虐待で訴えられているところだ。


「家の手伝い一日したって小銅貨一枚ももらえないよ。それに、兄貴には木剣や弓矢をタダでもらってるんだから感謝してもしたりないくらいさ!」


「それも気にするな。ちゃんと計算があってくれてんだからな」


 こいつらが冒険者となったとき、オレが作ったものを買ってくれるだろうし、ここで木剣や弓矢の性能のよさを宣伝してくれれば冒険者ギルド(支店)に卸しているものを買ってくれるかもしれないからな。


 まあ、損して得とれ〇ルネコ作戦だ。

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