第21話 少女はアホ子ちゃん

「相変わらず年下のクセに生意気ね、あんたは」


 お前には負けるがな、とは言わない。言ったら最後、心が折れそうなくらい罵詈雑言くるからな。


 ……アレは軽いトラウマになる……。


「生まれつきだ、気にすんな」


 最近、軽くあしらうのが最良だとわかったよ。オレの心を守るためには、だが……。


「んじゃな」


 ゆるめた足を速め立ち去ろうとするが、無駄な努力なのは身に染みてわかってる。わかってはいるがやらずにはいられない男心。悲しいぜ、男ってヤツよ

ぉ……。


「一人じゃあ可哀想だから手伝ってあげるわ!」


 世話がやけるったらありゃしないわ~とかなんとか言いながら馬車に上がってきやがった。


 軽く殺意が沸いたが、オレはクールな男。体は子供。中身は大人。ガキんちょの戯れ言ごとき軽く流せと、暴れそうになる自分に必死に言い聞かせた。


「て、手伝うのはいいが、勉強はどうした? 渡した話の文字はちゃんと書けるようになったんだろうな?」


「も、もちろんよ! あんなの簡単だったわよ!」


 まったく全然できてないようだ。


 ったく。字を教えろと騒いだクセに、まったくやってもいねぇとは。バカで許されるのはきょ──また殺気が──いや、なんでもありませんです。はい。


「そうだよな。十二歳には簡単すぎるよな。サプルと一緒にしたら悪いか」


 いや、スーパー幼女サプルちゃんとアホ子ちゃんとを比べるのが間違いか。ごめんよ、サリバリ。


「……今なんか、失礼なこと考えてなかった……?」


「いや、全然。なんで?」


 アホ子ちゃんとは言え、さすが女。勘が鋭いわぁ~。


「まあ、いいわよ。それで、今日はなにする?」


 なにか、なにして遊ぶ的な口調だが、君の目に後ろの薪は見えてないのか? 薪の納品は山部落に住む者の義務なんだよ。君んちでも出してるでしょ。


 まぁ、クールなオレは突っ込んだりはしないがな。


「薪を下ろして冒険者ギルドに寄ってオババんちにいってガキんちょどもの様子を見て漁港にいくよ」


「なーんだ。つまんない。いつもと同じか」


 ったく。これだからお子様には参る。仕事があることがどれだけ大切で


どんなにありがたいことかわからんのだからな。


「だったら家で勉強してろ。知識は財産。人生を豊かにして──」


「ねぇねぇ、知っている? 昨日、港にどっかの商船がきたんだって。珍しいよね。どこからきたのかな? そー言えばそろそろキャラバンがくる頃だよね。また市開くのかな?」


 って、聞いちゃいねーし。


 まあ、返答を求めていたわけじゃねーが、ちょっとは人の話を聞けよ。オレの心を労れよ。


「そこでラウが転んじゃってさ~。ほんと、ドジよね~」


 話が二転三転するのでなにを話しているかさっぱりわからん。


 これ、なんて苦行?

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