第20話 ヒロイン? いえ、子守りです

 オレらが住む山の標高は八百メートルと高いが、傾斜は結構なだらかで陽がよく当たる。


 高い木はなく、牧草地と住居としているので高原と呼べなくもない。


 木を伐りに行くには山を下りて向かいの山に入らなくてはならないので、そのときは三日間泊まりかけでいっている。


 もちろん、木を伐る山には数人が寝泊まりできる小屋があり、ちゃんと馬車が通れる道ができている。


 まあ、そっちの話はいずれとして、住みかとしている山(部落)を便宜上、集落山、または陽当たり山と呼び、木を伐る山は伐り場と呼んでいる。


 ネーミングの突っ込みはノーサンキュー。百年前以上の昔に付けられた名称である。わかりやすいと納得すれば気にもならんよ。


 オトンは違う村生まれの四男。オカンはこの村の生まれで開拓時代から続く農家の次女。余所者と次女が結婚するのは珍しく、家を持つなど奇跡に近いが、オトンは十六歳から冒険者として働き、その才能とたゆまぬ努力で一攫千金を実現させた。


 なんやかんやでオカンと出会い、聞くに耐えない恋愛を経て集落山の中腹(下にいくほど旧家となる)に土地と家を手に入れたそーな。


 中腹と言っても村の集落から直線距離にして一キロ。ショートカットすれば直ぐに下りられるが、馬車でとなると三キロ近くなる。


 集落山には十二軒の家族が住み、ほとんどが家畜を飼育しているので牧草地を持っている。なのでS字の道となっているから距離が延びてしまうのだ。


 まあ、そんな通りなれた道をパッカラパッカラ下っていると、一人の少女が立っていた。


 山部落の纏め役で村の長老衆の一人、オンじぃのひ孫、サリバリ十二歳だ。


 オンじぃの家は四家族二十六人と大家族なので日々の仕事には余裕があり、子供の仕事は午前中には終わってしまう。


 サリバリはオンじぃの家では一番下なのでさらに仕事はない。サプルのように魔術ができて料理もでき、畑仕事だって家畜の世話だってできるスーパー幼女ならまだしも、普通の十二歳にできる仕事はそうはない。なので一人で遊んだり、道に立って遊び相手がこないかを待っているのだ。


「……また厄介なのが……」


 幼馴染みと言えば聞こえは好いが、近所のクソガキと言ったら苦味しか出てこない。


 十二歳とは言え、女は女。やたらと口は回るし、口が上手い。二歳上だからやたら姉ぶる。こっちは子守りの心境だっつうの。


 だいたいオレは昔(前世)から巨乳好きだ。ツルペタなど女──どこからか殺気が──おほん! まあなんだ。あれだ。


「よっ、サリバリ。元気にしてたか」


 子守りも立派な仕事ってことだ。うん。

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