第14話 大変お買い易くなっています

 創ってみた。


 創ってはみたものの、コレ、誰が使うんだ? と、ふと思う。


 投げナイフが一般的になってないのにクナイなんて言う前世の、しかも大昔の忍者が使ってた武器などなにに使えと言うのだ。


 斬ることに特化している訳でもなければ突くことに特化している訳でもねぇ。重さも強度も中途半端ときてる。まあ、結界でコーティングすれば強度は飛躍的に高まるが、それでも使い所がないのは確かだ。


「……オレが使えばオーガでも貫くことはできるが、もう結界弾があるからなぁ~」


 力はあるオレだが、スピードはそれほどない。まあ、野山を駆けているので年以上には速いと思うが、この世界には時速百キロ以上出せる魔物魔獣はたくさんいる。


 実際、下級クラスの灰色狼に襲われ、棍棒で戦ったが、一発も当てられず、土魔法で落とし穴を作って倒したくらいだ。


 ヤツらが速さと数でくるなら、こちらは数と量で対抗するまでと、BB弾くらいの鉄の球を作り、ばら蒔いて倒す戦術を思いついた。


 その戦術は有効で、ゴブリンの群れを瞬殺してきたのだが、革袋に二千発もの鉄の球を持って歩くと言うのは思っていた以上にうるさかった。


 殲滅戦には有効だが、狩りには不向き。なのでドングリ型の礫を指で弾く、指弾を思いついた。


 五トンのものを持っても平気な体でするのでピストルにも負けないと、使っていたのだが、ふと、これ、結界でもやれんじゃねー? と思ってやったらあらできた。ならこれでイイじゃんと、オレの装備から礫つぶては消えた。いや、ナイフも消えた。結界超便利~。


「ボツだな」


 まあ、いろいろやってればボツの一つや二つ珍しくもないと、クナイを砂鉄に戻した。


「やっぱ、定番が一番ってことか」


 規格を統一した方が作り易いし、使う方も扱い易いだろうよ。ナイフごとに鞘ベルトや予備箱を変えるのも消費者(冒険者)様に申し訳ないしな。


 砂鉄箱に右手を突っ込み、定番の矢印型の投げナイフをイメージして砂鉄を結合する。


 十セットで銅貨三枚。約二千五百円。安物のナイフでも小銅貨六枚。約五千円。大変お買い求め易くなっています。


 砂鉄箱一つでできる数はだいたい六十本から七十本くらい。まあ、適当に集めて適当に箱に入れてるからな。


 今回は六十二本。約銅貨十八枚と小銅貨三枚。約一万五千円くらいだが、元手はタダ。手間はほんのちょっと。それを二十分もかからず作れるのだからボロい商売である。


 まあ、需要がないので余剰在庫になるんですけどねっ。 

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