第15話 ぶっちゃけると
まあなんだ。アレだ。
ぶっちゃけると、内職しなくても我が家は普通の仕事だけで充分やってける。
畑は季節ものをやっているのでオカンだけで事足りる。手伝うのは耕しと収穫くらいなものだ。
薪はだいたい四日に一度木を一本伐ってくればイイ。所要時間二時間。薪割りなどエアーチェーンソーで一時間。斧や鉈を使っても一時間。集めるのに一時間。半日も掛からねー。
ラムノの収穫期と干すのは忙しいが、そのときは山の女衆が手伝いにくるので目の回るような忙しさはねーし、ガールズトーク(?)の場となるのでオレは違うことをやっているのが実状だ。あの中には入れんって。
山羊の乳搾りは隣んちのおじぃとおばぁがやってくれるのでほぼ放置である。牧草地も隣任せだしな。でも肥料撒きはしてるぞ。
そろそろ毛長山羊の毛を刈る季節だが、結界で固定してナイフで刈れば一日も掛からねー。刈った毛は内職で使う分を取って残りは女衆行きなので、やはり放置と言っても過言ではないだろうよ。
狩りにしてもトータが一日で三日分は狩ってくるので余る一方だ。たまにオレも狩りに出るので増える一方。山の衆やオババに分けても焼け石に水状態だ。
遊べばイイじゃんと、思うだろうが、こんなド田舎で娯楽施設なんてある訳でもねーし、遊べる相手がいねー。
別に友達がいねーってわけじゃねーぞ。男女を問わず友達はいる。ただ、遊べる時間がねーんだよ。
村と言っても端から端まで五、六キロはある。半農半漁の村だから集落は二つに別れている上に業種が違うから時間帯が噛み合わないのだ。
漁業は朝日が昇る前から働き出し、夕方には床につく。
農業は朝日とともに目覚め、夜の八時くらいには床につく。ちなみに蝋燭は安価──農家の内職率一位なので暗くなっても起きてられるのだ。
噛み合わないと言ってもまったく接触がない訳ではねーぞ。どちらもそれだけでは生きられる訳じゃねーしな。半農半漁の村だから魚と野菜の物々交換(市)が起こるからそこで繋がりが生まれる訳だ。
オレたち山の衆も魚は食べるので、肉と交換するために市に立つ。
だが、こんな村の人口(五百人くらいかな?)の市では一時間もしないで終了。女衆の井戸端会議のようなもんだ。
男衆も仕事ばかりってわけじゃねーからたまには親睦を深めるために酒盛りをしたりする。
大人はそれでイイが、子供(八歳から十五歳の間)は仕事が忙しくて遊ぶ暇ねぇし、あっても村落の子供同士で遊ぶくらいだ。
山の部落にも子供はいるし、同年代は何人かいる。が、山の暮らしは下の部落より厳しい。子供の仕事たる枯れ木集めや畑の手入れ、水汲みに家畜の世話。そして、内職だ。とてもじゃないが遊ぶ暇などない。
まあ、遊ぶ暇はなくても手伝いやお裾分けで赴くのでおしゃべりすることはできるので友達関係は築ける。
それでも時間は豊富に余る。
暇に任せて
あんまり調子に乗ると村の連中にバレるので、それ以上は自重しています。
んで、することなくて内職に走っちゃったわけさ。
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