第12話 不思議パワーは超便利
薪の積み込みは一時間もしないで終えてしまった。
しかしなんだ。この世界に生まれ十年経つが、時間の感覚が消えないってのも不思議なもんだ。
こんなド田舎で暮らすなら朝昼晩夜さえわかってればこと足りる。麦の種蒔きやらは村の長老連中が経験と勘でやっているし、収穫祭などの祭りごとは村長の判断。人別判別帳なるものがあるが、生まれた年と性別、あと季節くらい。日付など知ってる者など村で五人もいないだろう。
ちなみにオレも今日がなに月の何日かは知ってるが、やっぱり春夏秋冬がわかり朝昼晩夜で事足りるので普段は気にもしない。
なんたってお日様が天辺にきたらとか、山に隠れたらで済むのだ、時間などあってないようなものだ。
どうしても知りたいときは庭の年時計と日時計で確認すれば良い。手作りなので正確ではないし、天候が悪いとわからねぇが、気にした方が負け。ド田舎時間はファジーなのだ。
一息つき、二人に目を向けた。
まだやってるよ。
トータはまだしもサプルも魔法(魔術)に夢中になっている。
血がそうさせるのか、それともオレが悪いのか、サプルは普通の女の子のようにオシャレや人形にはまったく興味を示さず、魔法に料理に物語を求めている。
まあ、サプルの人生はサプルのもの。好きにすればイイさ。サプルもトータもいずれはこの家を出るんだからな。
もちろん、残りたいと言うのなら残ればイイ。家なんてそうそう建てるもんじゃねぇから三世代同居なんてよくあることだ。
まあ、オレには力と土魔法があるからサプルが結婚するときは家を造ってやるがな。
なんて遠い将来のことは将来考えるとしてだ。ついでにオババんとこに持って行く食糧も積んでおくか。
家の裏へと回り、山を掘って(土魔法で)造った保存庫へと入る。
保存庫とは言っているが、ここはシェルターも兼ねているので出入り口は結界で隠してあるし、万が一見つかったとしても家族以外の者が入ることはできないようにしてある。
入ってすぐは資材置き場だ。物置小屋もあるが、それは柵や農機具、盗まれても構わないものを入れてあり、ここにあるものは知られるとまずいものや内職関係のものを置いてある。
その奥に通路があり、四メートルくらい進むと階段の踊り場に出る。
下に下りると住居区で、上に上がれば保存庫だ。ちなみに灯りは光を封じた結界を使用している。いや、まさか光まで閉じ込められる結界を生み出せるとは、不思議パワー超便利~。
「確かに塵も積もれば山となる、だな」
一年前から保存庫はサプルに任せていたから最近こなくてわからなかったが、なるほどこりゃ一杯だわ。
我が結界は時間を停める結界も生み出せるので捌いた肉だろうが熱々の料理だろうが関係ねー。ねーのだが、さすがに貯め過ぎだな、こりゃあ~。
「オババのところに持っていくだけではどうしようもねーな」
十日ばかり持ってったところで棚の一枠が空くくらい。全体から見れば一パーセントも減っちゃいねぇよ。
「どーすっかな~?」
もう一つ保存庫を造ったところで二年後に一杯になってるところが目に見える。売るっても結界は秘密事項だ。オババらには魔術とは言っているが、見るものが見たら魔術じゃないことはわかる。
バレたらバレたでしょーがねーとは腹をくくってはいるが、わざわざバラすほどアホじゃねー。利用されるならまだしも拐われて奴隷に、なんてことになったらシャレにならんからな。
「行商のあんちゃんに捌いてもらうか」
こーゆーときのためにいろいろと便宜をはかってんだ、遠慮なく役に立ってもらおうではないか。
「オババんとこに持ってくのはいつものでいっか」
缶詰めならぬ結界詰めを結界で生み出した籠に入れ、外へと出た。
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