第2話 五体満足無事転生
まあなんだ。アレだ。
五体満足無事転生。ヴィベルファクフィニー誕生。前世の記憶があるのはご愛嬌。考えるな感じろ的なもんだろう。
実際、これと言って不都合はないし、両親、特にオカンは天然と言うか、おおらかと言うか、ごーいんぐまいうぇ~いな人なので滅多なことでは物事を追求したりはしない。それどころかよくこんな弱肉強食な世界で生きてこれたなと心配するくらいだ。
オレが生まれたところは、半農半漁の村だ。
アーベリアン王国のシャンリアル伯爵領にある可もなければ不可もない、中規模的な村だ(行商人談)。
勿論のこと、電気もなければガスもねぇ。水も井戸か湧水利用だ。トイレなんて野ざらしかボットンだ。まあ、うちは水洗だがな(自慢)。
風光明媚と言やあ聞こえはイイが、田舎も田舎、ド田舎なのは間違いない。だが、オレ的には満足である。
前世のオレの実家は農家。山や田畑に囲まれたド田舎だった。
小学校は徒歩一キロ。バス三キロ通だし、中学は山一つ越えの自転車七キロ通だ。高校なんて駅まで五キロ。電車で二十キロ通である。嫌でも根性が鍛えられるってもんだわ。
まあ、社会人になってからは都会暮らしだったが、四十も半ばになれば老後は田舎でスローライフもイイかなと想像することも度々。それを思えば夢が叶ったのだから文句など出るはずもない。
マジ、スラム街生まれとか奴隷じゃなく助かったぜ。
ましてやこの世界は魔法があり、いろいろファンタジー的な道具が流通している。加えてオレには三つの能力がある。工夫次第では前世より快適な生活を送れるってもんだ。
ド田舎とは言え、村の中心にはある程度は揃っている雑貨屋や鍛冶屋を兼ねた武具屋もある。毎朝ちょっとした市が立つので野菜に困らない。
月一で領都から行商人もくるので生活物資も手に入れられる。なければ注文して取り寄せてもくれる。冒険者ギルド(支部)だって、一応ある。
まあ、生まれた頃は困惑もしたが、焦るような人生ではない。
必死に、でも、やりたいように生きてたらいつの間にか五歳になっており、なんやかんやで十歳になっていた。
不満などない。まさに理想のような子ども時代であり、理想のようなスローライフと言ってもイイだろう。
素晴らしきかな今世である。
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