村人転生~最強のスローライフ

タカハシあん

第1話 オレ転生 2014.01.25

 まあなんだ。アレだ。


 いわゆる神様失敗。オレ転生、ってことらしい。


 ……あっさりしてるね。


 死んじまったもんはしゃーねーだろう。それとも生き返れんのか?


 ……無理だね。


 じゃあやっぱりしゃーねーだろうが。


 ……理不尽だと怒らないの?


 四十も半ば、派遣社員の独身男。貯金は多少はあるが、これと言った夢もなければ将来の展望もない。病死で孤独死決定のそんな人生なんだ、死ぬのが早まったくらいで理不尽なんて言えねーよ。


 事故で死んだんなら葬式出してもらえるしな、ありがたいくらいだ。


 心残りと言えば両親くらいだが、両親は元気だし、面倒は兄貴たちが見てる。孫にひ孫と大勢いる。オレが死んだところで支障はないさ。


 ……子は子。まっとうな親なら悲しむもんだよ。


 そう言われちまったらなんにも言えないが、まあ、あのまま生きても親不孝な子どもだったんだ、今さらだ。


 いいこともあったし、悪いこともあった。大きな波乱もなく並みの人生を送れたんだ、オレはそれで充分だよ。


 ……そうかい。君がそれでいいのならこれ以上はなにもいわないよ。


 まあ、そう言うことだ。


 ……君が充分な人生だったとは言え、君の死はこちらの過失。お詫びをしなくちゃね。


 律儀な神様だな。バスが横転して乗客が死ぬだなんてありそうな事故で片付けられるだろうに。


 若いヤツらにしたら気の毒なことだが、人間、死ぬときは死ぬ。非業の死なんて珍しくもない。諦めて来世を謳歌しろよ。


 ……輪廻転生は誰にでも適応するわけじゃないけどね。


 そうなのか? 


 ……まあ、それはそれとして、君には輪廻転生が可能であり来世は違う世界に生まれることになる。


 オレに決定権はないんだ、勝手にしてくれ。


 ……君には、いや、君らにはお詫びとして三つの力を与えよう。なにがいいかな?


 三つの力、ね。なんか魔神みたいだな。いいのかい、そんなえこひいきして?


 ……構わないよ。この世界の真理はこちらの神が決めること。魂に能力を与えても誰に処罰されることもない。まあ、余りにも強い力だとあちらの神に介入されるかもしれないから、過ぎたる能力は止めておいた方が無難だよ。


 ちなみに転生される世界ってどんな世界なんだ?


 ……よくは知らないけど、地球よりは文明が遅れてて、魔法が浸透している世界らしいね。


 剣と魔法の世界ってか。ゲームかよ。


 ……君らにはそう見えるかも知れないけど、現実世界なのは理解してた方がいいよ。


 まあ、どんな世界だろうと生きるってのは艱難辛苦かんなんしんくがつきもんだからな、過度な期待はしてないよ。


 ……それで、どんな能力が欲しいかな?


 そうだな。五トンのものを持っても平気な体と自由自在に操れる結界使用能力。あと土魔法の才能、がいいな。


 ……随分と早い決断だね。


 四十年以上も生きてればこんな力があったらなーって思うことなんて一度や二度じゃないしな。


 それに、過ぎた力は災いを呼ぶって言う。平々凡々に、悠々自適に、前よりはいい人生にしたいからな、そんなもんだろう。


 勇者になって世界を救うとか、自由気ままに生きるとか、四十年以上生きてたらそんな心意気も萎えるってもんだ。


 ……まあ、人それぞれさ。


 そりゃそうだ。


 他人の生き方にどうこう言えるほど立派な人間でもなければ、立派な人生でもなかった。生きたいように生きればいいさ。


 ……じゃあ、そろそろ転生させるよ。


 ああ、頼むわ。


 ……では、よき来世を。

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