博士が望むもの
酸化する人
第1話殺人機械
ワタシは博士から作られた。
人を殺すことに特化している機械として。
そして、たくさんの人たちを殺してきた。
そのことについて特に疑問を抱くことなど、なかった。
それがワタシの存在意義なのだから。
今日も、人を殺すように命じられている。
「博士。なぜこの人たちは、殺されないといけないのですか?」
殺されるほどの罪でも背負っているのだろうか?
ふと疑問が浮かんでくる。
「…まさか、殺人に特化させた機械が、そんな風な疑問を抱くとはねぇ…。まあいいや。…逆に聞かせてもらうけど、君は理由がなければ、人を殺してはいけないとでも思っているのかい?」
「…。はい。ワタシはそう考えています。ですが、機械であるワタシが言っていることなので、間違った考えだと認識しております。」
「そんな風に、自分の考えをすぐに否定するな。…正解なんてないのと同じように、間違いなんていうのも存在しないんだよ。」
そう言うとライターでたばこに火をつける。
ほのかに香る煙の匂いが心地よい。
「…博士はどう考えているのですか?」
「ボクかい?ボクはね、君とは正反対の意見だよ。理由がなくても殺していいと思っている。」
「そう…ですか。」
ワタシには博士の考え方が全く理解できない。
それは、きっとこの身が機械でできているから…。
「人間は有史以来、一日たりとも殺し合いをやめたことがないらしいんだよ…。恐らく理由があってのことなんだろうけど…。でもね、ボクはこう感じるんだ。その理由は後付けなんじゃないかなって。本当は単に殺し合いが、好きなだけなんじゃないのかなってね。」
ワタシに殺された人たちは全員、悲しみや絶望、そして怯えた表情をしていた。
そんな人たちが、殺し合いを好むことなどありえるのだろうか?
「…どうやらボクの考え方に、納得がいかないようだね。」
「そ、そんなこと…」
やっぱり人は感情を読み取ることに優れている。
注意しないと…。
「いや。それでいいんだ。自分で考えて、自分で結論を出すという過程が、大切なのだから…。」
博士がどこか遠い目をしている。
なにを考えているんだろう。
知りたい。
「さてと。そろそろ仕事に移ってくれないかな?…話の続きは、後からたっぷりしよう。」
「了解しました。」
この疑問は、きっとバグなのだ。
早く修正しなくては…。
「や、やめてぇ。こないで!いやあああああ。」
ドンッ!
脳天を打ち抜いたので即死する。
できるだけ、苦しまないように心がけたつもりだ。
「よし。これで、あと一人…。」
もう一人。
と言ってもすぐ目の前にいる。
「お母さん!なんで…。よくもぉ!お母さんを!!」
ワタシに殴りかかってきた。
「この子供が、最後のターゲットですか…。」
できるだけ、この子も痛みを感じないように…。
銃口を向ける。
これで終わり。
ドンッ!
「…。はずした?」
至近距離から撃ったのに、はずしてしまった。
おかしい。
もう一度引き金を引こうとする。
しかし、指が動かない。
「そうか…。ワタシは…。私は…。」
【修正不可能なシステムエラーが検出されました。強制的に自爆モードへ移行します。】
ダメだ。やっとわかったのに…博士のことが。こんななtころで終わるわkには…。
【強制的に自爆モードへ移行します。】
私にハやる…べきこトが!
【強制…的に…。】
「遅かったね。待ちくたびれたよ。」
「…。」
「そうか。それが君の出した結論か…。なんとも人間らしい結」
ドンッ!
安らかに眠ってください。
博士。
博士が望むもの 酸化する人 @monokuroooo
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