第3話
会社の外に出ると、そこあの女性がいた。たしか、あの騒動のあと警察に連れて行かれたはずだが。
「あれ、さっきの人じゃん~」
あの時とは違い、小倉は軽く接した。基本的に社交的でTPOをわきまえるから、みんなから好かれる。こういう時にこういうやつがいるだけで気まずさが柔らぐ。
「何しに来たの?」
「いえ、謝罪をしに…。先ほどはご迷惑をおかけしました。それだけなので、失礼します。」
「ねぇ、この後こいつと二人で飲みに行くんだけど一緒にどう?」
僕は小倉の突然の提案に理解できず、思わず「は?」と口に出てしまった。
「いえ、そちらの方が迷惑そうなので遠慮します。」
「ちょっと待ってて」
と僕は肩を掴まれひそひそ話でこっちに話しかけてきた。
「お前はどうなんだ?」
「あまり、関わらないほうがいいぞ」
「なんで?かわいいじゃんかよ」
「いや、メンヘラとは地雷女かも知れないだろ。」
「そんなん、話してみてそうだったらお暇すればいいんだろ。」
「巻き込むなよ。」
「じゃあ、いいな。」
「だから」と言おうとすると
「こいつも来てほしいみたいだよ。俺が奢るし文句ないでしょ。話したいし。」
と大きな声で言った。
彼女も少し悩んで
「お言葉に甘えて」
となぜかさっきまで死のうとしてたやつと飲むことになった。まぁ、なぜ死のうとしてたのか知りたくないと言ったら嘘になる。
そこから、居酒屋に移動して、最初はお互いに気をつかって話が弾まなかった。
「自己紹介からするね、僕が小倉海で、こっちが同僚の桂木裕太だよ。僕たちはあそこのビルの佐藤商事に務めているんだよ。趣味はゲーム、アニメ。」
「僕は好きなことは映画鑑賞かな。」
「私は佐島清美と言います。」
そこで終わった。いや、もっとあるだろうとか思いながら、
「何歳ですか?」
「24歳です。」
「2個下なんだねー」
とかつまらない話が続いた。
「生おかわりー!」
「僕も。」
どんどんとお酒が入ると相手に気をつかわず、ずかずかと質問できるようになった。
正直、お酒はすごい。
一部、彼女も話したくない部分があったらしいが、大方話してくれた。
「私なんて生きる価値がないのよ!」
と怒った風に言ってくる。
「私はね!真面目に生きてきたのよ!高校生の時なんか大人しくしてて、友達の女の子が好きだった男子から告白されたのよ。それで、私はその人のこと何とも思ってないし、その男を好きな人に譲りたいって気持ちからちょっと強めに断っただけなんだよ!そしたらその女子から何様なの?とかキレられて陰湿ないやがらせされてくるようになったし、さぁー」
「はいはい、高校の時辛かったんだね。でも10年も前でしょ。」
「あんたより2歳年下たがら8年前ね」
「めんどくせー。」
「そんなことより、最近ー」
彼女はお酒を飲む前はおしとやかだったのに、酒が入ると男勝りになるようだ。
君のせいで これ丸 @koremaru
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