第2話

僕は彼女が死のうがどうでもいいが、目の前で死なれるのは嫌だ。死ぬなら誰もいないところでやれよと思った。仕事が積み重なったイライラしていたからか、目の前で死なれることに対して怒りさえ覚えた。

小倉が「君が死んで周りの人が悲しむよ。」

女性が「誰も悲しまないわ。」

「いや、親とか。」

「もう、他界してる。」

「じゃあ、友達とか」

「いない。」

「じゃあ…」

「無理に探さなくていいわよ。」

僕の第一印象はとんだメンヘラ女子だなー。とんでもなく、迷惑なやむだなー。

といったことだ。僕は自分でもなんで言ったのかわからないが、気がついたら口が動いていた。

「迷惑。他で死んで貰ってもいいですか?」

「「えっ?」」

小倉と死のうとしていた女性までが間抜けで、ポカンとした顔でこっちを見てきた。エンジンがかかった僕は止まらなかった。

「だから、死ぬのはどうでもいいけど、下にはあなたがもたついたせいで、野次馬がいるし、多分すぐに警察もくる。何より、目の前で気分がわるい。死体処理とかどうするつもりなんですか。考えてもみてくださいよ。グロいし、大変でしょ。樹海いきなよ。」

自分でも不思議なくらいペラペラと言葉が出で来る。

とっさに小倉が「まぁ、死んでほしいとかじゃなくて、ほら、彼なりの止め方なんだよ。だから、やめなよ。」とフォローを入れてきた。

そこから、彼女の何かが決意みたいなのがなくなった。

そこから冷静になったのか、警察のパトカーが一台来るとそこで辞めてしまった。

そこで泣き崩れた。ちょうど、警察が屋上まで上がって来たときだった。

そこからが面倒くさかった。警察に事情聴取やら、なんやらでただたばこを吸いに来ただけなのに、2、3時間拘束された。

小倉と二人で戻ると課長の鳥越さんに呼ばれて、嫌みを言われた。

「仕事より女の子を助けるなんてかっこいいなぁー」

「すみません。」

「俺より、仕事を分担した奴らに謝れよ」

「はい。」

「今日は残業な」

「分かってます~」

自分の席に戻り、自分の仕事を分担した人たちに謝った。いつもならただ、残業すればいいだけだか、仕事の納期が明日までできついから、鳥越課長が気をつかってくれたのだ。

「ほい、終わったぞ。それにしてもかっこいいねぇー」

「はい。迷惑かけました。小林先輩。」

小林加代さんは僕の2つ上の先輩だ。

女性だけど、いろいろと男まさりな所がある頼りになる人だ。

そこから、定時を過ぎてからも、残った仕事をした。手伝っくれた人たちはある程度のところで悪いので帰って貰った。そして、仕事が終わったときはもう夜の10時前ぐらいだった。

残っているのは小倉だけだった。

「海、終わった?」

「あとほんのちょっとだから待って。」

「この後、飲みに行こうぜ。」

「お前から言ってくるって珍しいなぁー」

「ちょっと愚痴りたい。」

「そうかい。だったら待ってて。」

「了解。」

そう言って僕は小倉の横でスマホを出してゲームした。

「裕太、終わったぞ。」

「ほんの少し待ってていいところだから。」

「あのなぁ~」

「すぐすぐ」

「3分で片付けろ」

「余裕。」

そうこうあって会社の戸締まりをして会社を出た。

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