第2話 覚醒の鼓動
『あ・・・・れ俺はどうして』
『そうだ確か漫画見たく背中に刀が刺さって・・・事故ったんだっけか』
『あれ?ならなんで生きてるんだ?』
昇はとぎれとぎれになりながらも思考を再開させていく頭を起こしつつ周囲を確認する。
周囲は火の海かと思いきやほとんどが消火されていて煙が多少立っているぐらいに沈静化していて前方には二つのグループが対面する状態で対峙していた。
近い方のグループは殆どの人間が倒れ伏し立っているのはそのグループの中では一番若いと思われる女性ただ一人だった。
奥にいるもう一つのグループは対照的に誰も倒れてはいないが無傷という訳でもなく全員大なり小なり怪我を負っている。
『雰囲気的には敵対してるようだが数では奥のグループが多い。ただ手前のグループの女性はほとんど無傷、本人の戦闘能力次第では如何にか出来るか?といったところか。』
そう何故か意識がまだぼんやりしている中で"事故を起こす前"よりも頭がさえているかのように状況を正確に分析する。
『いや、そうか子供が人質に取られているのか・・・』
奥のグループの先頭にいる男が如何にもドラマで人質を取った凶悪犯人のように一人の子供を抑えこんでいるのを見て納得する。
『え』
そして人質に取られてる子供、いや少女の顔を確認したときに昇は時が止まったかのような感覚を覚えた。
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あいつとは大学時代に海外でそこそこ長い留学をした時に出会った。俺より年下だったが飛び級を重ねて大学生になったまさに天才とはこいつのことだなと思うほどの奴。あいつに勝てたり並べる物何て俺には1つずつぐらいしかなかったな。
あいつは叶えたい望みがあると成さねばならないことがあると言っていた。
どんな?と聞くと言い淀んで話してくれなかったが友人だからといって何でも話さなければならないという訳でもないので特に気にしなかった。
少なくともあいつの中で何よりも大切なことだとは俺のような非才の人間でも分かったからだ。
その後あいつは少ししたら飛び級してしまったし俺も少しして日本に戻ったので1年ぐらいしか一緒にいなかったがその1年は楽しかった。今でも電話や手紙などのやり取りはしている。今日は偶々この町を訪れるので俺のおすすめのレストランで久々に顔を合わせて食事を取るはずだった・・・なのに。
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『なぜそこにいる、なぜそんな苦しそうな顔をしている!?』
そう思った直後昇は瞬間的に起き上がり、少し前の自分から考えられないほど速く道路を掛けていた。
昇は平時は割と理性的な人物である。が今回は事故直後ということもあり思考が単純、簡素化していたことと"とある理由"で一時的に理性のタガが外れていた為ほとんど脊髄反射のごとく動くこととなった。
ようは友人を助ける為に敵陣に真正面からの"単身突撃"である。
とはいえたった一人、怪我をしているとはいえ複数人の集団に真正面からは挑むのは余りにも無謀だ・・・それが"常人"であった場合の話ではあるが。
彼の身体は足を進めるごとに変化していた。
足腰は1歩ごとに強靭な人外の脚力に
胴体は胸を張るごとに人外の強度に
両腕は振るごとに人外の腕力に
いつの間にか右手には先ほど自身を貫いた刀を握り
頭はまるで竜や悪魔のような顔へと変貌を遂げていた。
そして昇はその小さな友人の名を叫び、救うべく全霊の一撃を敵対者達に繰り出す。
「テェェェェレェェェェズゥゥゥゥーーーーーーーー!!!!」
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