第1話 愛車と共に生まれ変わった日

 軽快なエンジン音を響かせて人通りの無い夕方の万朝市の街を自身の愛車(バイク)であるオートマトン略してオートマを駆り道路を走る。

ここ最近近くの町々では物騒な事件が頻発していて、分かりやすいのでつい先日2つ離れた町で新しく出来たショッピングモールが爆発物によって倒壊しテロによるものでは?とニユースを騒がしている。

幸いなことにこの万朝市は平和そのものであったが。


「なーんでこんな日に・・・」

少し苛立ちを覚えなら少し離れたレストランに向かう。


『ここ最近頭痛が続いてたが、今日はやけに酷いな』

と心の中で舌打ちする。

彼はここ最近謎の頭痛に悩まされている。彼を幼い時から見ている診療所の老医師も首を傾げるほどだ。

外部からの刺激による精神的ストレスが原因ということぐらいしか分かっておらずまた彼自身も生活習慣に変化がないので同じく首を傾げる事になる。

『ただ・・・普通の頭痛じゃないような、まるで何かが呼び掛けてくるような感じなんだよなコレ』

安全運転を心がけて走行しつつ独り言ちる。


そういうこともあり用事無ければ家から出ないのだが・・・。

「久々に会う友人との夕食に体調が悪いとかついてないな」

そういう理由でバイクを走らせている。


《ゆえにこれは運命、本人の預かり知らぬ所で起こる事件のとばっちり》


「む?今何か」

彼は一瞬通り過ぎた違和感を感じ取り訝しむそしてその直後


「な!?」

遠目で見えるのビルから起こる爆発、そこに一瞬釘付けになりながらも我に返り前を見る。


『取り合えず警察と消防呼ばないとな、どこか停めるところ・・・を?』

ふとバイクのサイドミラーを見る。


《鏡を見て最初に思ったのはどことなく感じた違和感、今までに感じたことのない悪寒。なぜかスローで流れる風景、そしてそれを認識した時に理解する》


《それは日常では余程の事がなければ経験しえない・・・

                    死の予感であったということを》


「は?」

背中から心臓を乗っている愛車ごと貫いたのは一振りの刀。

彼からすれば余りに唐突過ぎる展開、とんだとばっちり。爆発の衝撃で吹き飛んだ刀が"偶々"通り掛かった彼とその愛車を貫くという予知しようのない運命。


ギャグ漫画のようなそれは確かに死をもたらす刃。

彼は当然通常の運転を維持できず転倒、コーナーに衝突しバイクが爆発炎上する。


ここに彼こと瀧川昇と彼の愛車であるオートマトンの生が終わりを告げる。


《そして新たな二つの運命が生まれ出でる》


《ダブルクロス》それは裏切りを意味する言葉。

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