029「あさちゅん-2」
「んー、だからね。手当したヴィルを連れて帰って来て寝かせたら私も眠くなっちゃったから一緒に寝ただけだよ?」
そうですか、手当てしてくれたことはありがとうございます。
腕と足をぶった切ったのはレーラさんだけど、ちゃんと手当してくれたことは感謝しておこう。
「ヴィルの寝顔は可愛かったわよー。普段はつまらなそうな感じの大人みたいな表情が多いのに、寝顔は純粋無垢な年相応な子供みたいな感じだったからついつい眺めちゃった」
いや、それはそれで色々と思う所はあるんだけど……。
まぁ、それよりも。
「店長、とりあえず服を着てくれませんか?」
あと、俺の服を何処にやったのか教えてください。
「服?あ、そういえば寝る前に脱いだんだっけ」
何を着よっかなーって、背後でレーラさんがベッドから抜け出してごそごそしているの感じるのを無視して壁のシミを数える作業を続ける。
ちょっと、別のことに集中しないとさっきのことを思い出しそうだ。
あの後、おはようって挨拶したのに何故か二度寝しようとしたレーラさんを起こして状況を聞いたらマイペースに説明してくれた。
起こした後は俺はレーラさんを見ないように壁の方を向いているので、とりあえずは色々と大変なことになってるのはバレていないと思うけど……。
さっさと身体も離したし、バレてないといいなぁ。
「ねぇ、ヴィルー」
いまレーラさん着替えてますよね?振り返れないので呼ばないでくれませんかね。
「何ですか店長?」
「朝ごはんよろしくねー」
………………………………はぁ。
なんだろうか、何か虚無感が凄い。
昨日の夜はあんなに怖かったのに、一晩経ったら普段と全く変わらない様子で接してくるレーラさん。
まぁ、昨日の感じで接してこられたら怖くて嫌だけど。
「それより、服を着たのでしたら僕も着替えたいのですが」
ついでに、外に行ってくれると大変助かるんだけど。
「ヴィルの服?あぁ、そういえば服どうしよっか……」
ちょっと待て、何か不穏な事言い出したぞ。
「外套以外は全部血まみれだったから着れるような状態じゃないと思うよー」
血まみれにしたのはレーラさんなんですけど。
まさか、孤児院まで裸マントで行かなきゃならないの?ゼンラーマンかよ、ペンデュラムにウニぶつけられるぞ。
「んー、どうしよっか。私の服でも着る?背もそんな変わらないから大丈夫そうだし」
……………………とてつもなく嫌だけど、とりあえず裸マントよりましか。
「すいません店長、お願いします」
「わかったよー、可愛いの選んであげるねー」
選ばなくていいから、普通の服にしてください。
何か知らないけどレーラさんが凄いうきうきで服選んでない?鼻歌まで聞こえてくるんだけど。
「ヴィル、ここに服置いとくから着替えが終わったら朝ごはんよろしくねー」
そう言い残して部屋から出て行ったけど、何でいきなりテンション上がってんだあの残念美人。
レーラさんって寝起き悪くて、しばらくはテンション低いことが多いはずなんだけど?
まぁ、いいや。
「せっかく用意してくれたんだし、とりあえず着替えるか」
もそもそと起き上がりレーラさんが置いた服を手に…………。
「てんちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
叫んでドアに走る、何でだ!開かねぇぞ!?
「ふっふーん。ヴィル、部屋に結界貼ったからその服着て来るまでは出してあげないからねー」
ちょ、この残念美人マジでふざけんなよ!?
なんでバリバリのゴスロリなんだよ!異世界にゴシックロリータファッションとか意味不明すぎんだろ!!
「その服ねー、昔妹にプレゼントしようって買ったのはいいんだけど渡すの忘れててねー。せっかくだからヴィルに着てもらおうかなっと」
妹さんがいるとか初耳なんですけど?
それに、街でゴスロリの女の子とか見かけたことないけど何処に売ってたんだよ。
「あと、机の上に声をすこしだけ高く出来る魔道具のチョーカーと、カツラも置いといたから着替えが終わったら結界解くからまた教えてねー」
つまり、これを着るまで外に出す気はないということかよ。
俺の魔法じゃレーラさんの結界はぶち破れないし。
結界ぶち破っても服がないんだから、裸マントで街をうろうろすることになるし。
「………………うわ、タンスにまで結界張ってやがる」
なんでこういうことには全力を出すんだよあの人は。
部屋を探してみるが、ゴスロリ以外の服は無さそう。
普段なら服とかその辺に散らかってるはずなんだけど、そういえば俺がこの間掃除したばっかりだった気がする。
「………詰んでね?」
いや、本当にこれ着るしかないの?
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