030「これで何を反省しろと?」
結界を解除してもらって、ガチャリとドアを開ける。
ドアの向こうではレーラさんが待機してた。
「……………………………ヴィル?」
どうして、何故にこうなった。
「えっ、うそ。ヴィルかわいいよ!予想以上にかわいいよ!!」
足がすーすーする。
「んー、本当に女の子みたい。あ、カツラずれてるから直すね」
なんでレーラさんこんなテンション高いの?何が楽しいの??
「はい、これでよし。んーついでに『固定』っと」
一瞬だけ魔力が走ったような感じがしたけど、いま何したの?
「店長?いま何かしました」
うわ、チョーカーのせいで声がちょっと高くて違和感がすげぇ。
「………………ねぇ、ヴィル。ちょっとお姉ちゃんって言ってみて」
何言ってんだこの残念美人。
「いや、店長それよりいま何を……」
「ヴィル、お姉ちゃんって言ってみて」
「いや、だから……」
「ヴィル、お姉ちゃん」
「…………………………お、お姉ちゃん?」
「!!!!!!」
ちょ、いきなり抱き締めて来るな!?そのままぐるぐる回すな!!
「て、店長!?本当にどうしたんですか!?」
「あー、ヴィルがかわいいー妹よりーかーわーいーいー」
…………………………………どうしたこの残念美人。
「店長、なんかキャラ変わってません?」
「お姉ちゃん」
「いや、何故にその呼び方に固執してるんですか店長?」
「…………………………………」
ドキドキするんで、無言で抱きしめたままこっち見ないでくれませんかねぇ。
「………お姉ちゃん、一体どうしたんですか?」
「んー、ヴィルがかわいいから私も楽しくなってる」
なにこれ、お姉ちゃんって呼ばないと返事しない感じなのか。
姉を名乗る不審者かよ、イルカもサメもクジラもいねぇぞ?
「お姉ちゃん、朝食を作りたいからそろそろ放して欲しいんですが?」
「んー、名残惜しいけど仕方ないか。美味しいご飯よろしくねー」
俺を開放してそのまま階段を下りていくレーラさん。
「…………………………なんか、疲れた」
軽く脱力。
まぁ、いいや。とりあえず朝食を作ろう。
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「んー、やっぱりヴィルの作るご飯は美味しいわねー」
そうですか、俺は髪が邪魔で作るのも食べるのも面倒ですよ。
このカツラ、肩甲骨のしたまで髪があるから作ってる最中に気が付くと髪が体の前に来てたりして邪魔だったし、食べてるときも結構邪魔。
結べばいいんだろうけど、結び方とかわからないし。
…………髪の長い女の人は大変だなぁ。
カツラ外せばいいやって途中で気づいたけど、何をどうやっても外れないし。
「店長。何でカツラに固定の魔法かけたんですか?」
カツラ直してもらった時に何か魔法の気配がしたと思ったけど、レーラさんに魔法をかけられていたらしい。
カツラを頭に固定する魔法とか他に使う場面あるの?
「………………店長?」
レーラさん、俺の言葉を無視してツンってわざとらしく横を向きながらご飯を食べ続けてるけど。
「お姉ちゃん、何でカツラに固定の魔法なんてかけたんですか?」
「んー、外れちゃったら困ると思ったからだよー」
いや、困らないから。それに、お姉ちゃん呼び継続してんかよ。
「今は服がないからこの格好してるだけですし。別に困ったりはしませんよ?」
朝食食べたら服を調達してとっとと着替える予定だし。
「なに言ってるのヴィル?今日一日はその恰好で過ごしてもらうよ?」
何を言っているんだこの残念美人は。
「私、気づきました」
何に?
「ヴィルには普通にお説教しても無駄だということに」
昨日の夜に手足ぶった切られたんだから反省くらいしてますよ?
「今日は普通にお説教しようと思ってたけど、お説教の代わりにヴィルには今日一日その恰好で過ごしてもらって反省してもらいます」
いや…………そうはならんやろ?
「服とカツラとチョーカーには固定の魔法をかけたので今日一日は脱げないし外れないからね?」
だから、そうはならんやろ!?
「いや、店長。昨日の件に関しては僕が全面的に悪いですし。反省してますよ?」
「…………………………つーん」
「はぁ…………お姉ちゃん、僕も流石に反省してますのでそれは許してくれませんか?」
トイレとかどうすんだって思ったけどスカートだったね。下着には固定の魔法かけてないっぽいし。
「嫌です。反省させる意味もあるけど、ヴィルが思ってた以上にかわいいかったので今日一日はそのままです。お姉ちゃんって呼んでもらえるし」
そっちが本音だと思うのは気のせいかな?
それに、この服装で可愛いって言われるのは男として割と複雑なんですが。
「でも、流石に一方的に反省を促すのはかわいそうだと私も思うのでヴィルにはチャンスをあげます」
………嫌な予感しかしないんだけど。
「ヴィルがもう少しだけ女の子っぽく……そう、妹っぽい感じで私にお願いしてくれたら許してあげるかも知れないよ?」
………本当に何言ってんのこの残念美人。
「なんなら、ちょっとだけ化粧してあげようか?」
断固として拒否するに決まってんだろこの残念美人が!!
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