016「この指輪は一体何なんだろう?-3」

突然落ちて来た本が顔を直撃して結構痛い。


とりあえず、起き上がって本を手に取ってみる。


サイズはA4くらいで結構分厚い。


片手で持てる大きさではあるけど、長時間持ってたら疲れそうな重さである。


色は銀色のような灰色のような色をしていて、表紙にも裏にも何も書いてない。背表紙には真ん中より少しずれた位置に透明な石が付いている。


「あれ?指輪がない??」


左手の中指に着いてた指輪がなくなってる。


「もしかして、指輪がこの本に変わったのか?」


本を回して色々な角度から見てみるけど、何かそれっぽい気がする。


指輪が本に変わるとか、何でもありかよファンタジーめ。


まぁ、端末であるはずの指輪が本になったということは読んでみたら何か使い方とかがわかるのだろう。


「んー、何も書いてないから上下がわからんのだけど、たぶん背表紙の石の位置的にこっちが上かな?」


まぁ、開いてみて違ったらひっくり返せばいいか。


「………何も書いてないないんやけど?」


開いてみたら白紙、ペラペラとめくってみても白紙である。


え?何これ??落書き帳なの???


本とカバーが一体になってるので、カバーを外したら何か書いてあるとかもなさそう。


本を閉じて眺めてみる、んーどうしたものかねこれ?


『―――端末ターミナルの初回起動を確認しました』


…………は?


『―――魔力による使用者登録を実行。以後、この端末ターミナルは登録者以外が使用することは出来ません』


ちょっと待って、いきなり何言ってるの?


『―――端末ターミナルの初回起動に伴い、管理者マスターからの伝言メッセージを再生します』


いや、だから一方的に頭の中に話しかけてくんなよ!


『―――やぁ、初めましてでいいのかな?』


いや誰、この声?


さっきまでの機械っぽくて無機質な声じゃない、マスターからのメッセージとか言ってたからこの声がマスターって奴なのか?


『―――本当は君に干渉する気なんかなかったんだけど、状況が少しだけ変わってね。神の一柱が干渉するみたいだったからね。ついでにこっそりバレないように干渉させてもらったよ』


なんだ、どういうことだ?何を言ってる??


『―――まぁ、こっちから一方的に話すだけだから色々と意味がわからないと思うけど。聞くだけ聞いて後で考えるといいよ』


いや、質問くらいさせて欲しいんだが。


『―――自己紹介をしてもいいんだけど、しない方が面白そうだからしないよ。とりあえず、僕のことは管理者とでも呼んでくれればいい』


管理者?マスターって呼ばれてる奴が管理者って名乗るの?管理者と書いてマスターと読むのか??


『―――まぁ、長々と説明するのも面倒だから簡潔に君にあげた端末の使い方を説明しようと思ったけど、やっぱり面倒だから自分で読んでおいて?』


ちょっと待て、何を言ってる?管理者名乗るならちゃんと説明しろや。


『―――使用者登録が終わったなら使い方が書いてあるはずだからね、書いてなかったら自分で使い方を探っといて』


本を開いてみるとさっきまで白紙だったページに文字が書かれていた。


『―――あぁ、その端末を取り上げたりはしないし出来ないから安心してね?それはもう君のユニークスキルの一部になってるから僕でも手が出せないんだ』


ユニークスキル?どういうことだ??


『―――というか、君がさっさとユニークスキルを発現させてくれてれば本当ならこんな干渉もしなくて済んだんだけどね』


待って、本当にどういうことなの??


『―――その端末でユニークスキルも発現出来たし、これで大丈夫だとは思うから後は好きに使って生きるといいよ?』


ユニークスキルを発現させた?意味がわからないからちゃんと説明しろよ。


『―――あぁ、そうそう。君はたぶん魔法が上手く使えてないと思うけど、やり方が間違ってるだけだからやり方を変えた方がいいよ?』


なんか、さらに爆弾発言をぶち込むのやめていただけますかね?


『―――君の記憶からわかりやすく説明すると。自分で粘土を用意してフィギュアを作るのが普通のやり方。君は、その辺の木とか石とかを使って人形を作るって感じかな。まぁ、普通のやり方も使えない訳じゃないけど、こっちのが楽だと思うから頑張ってね」


わかりにくいわ!というか人の記憶を勝手に読むな!!


『―――それと、これは僕以外の誰も君に教えられないだろうから教えとくね?』


…………なんなんだ、こいつ。


『―――創造する為には何かを模倣して研鑽するしかない。幻想を現実にしたいならそれを忘れないことだね。あと、君にあげた端末が幻視ファントムヴィジョン図書館ライブラリーなんて名前になった理由をよく考えておくといいよ』


…………本当に、なんなんだこいつ。


『―――さて、言いたいことは言ったはずだからこれでさよならだ。今回の干渉は想定外だったし、もう干渉することはないと思うからじゃあね?』


なんで最後が疑問形なんだよ。


『―――以上、管理者マスターからの伝言メッセージの再生を終了します』


管理者の声から機械みたいな無機質な声に戻る。


しばらく待ってみたけど、これ以上は何もないっぽい?


ベッドに倒れ込んでぐたぁと脱力する。








…………もう、なんか本当に疲れたよ。

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