009「エルフの薬屋さんというテンプレ-3」
結界の魔法。
結界の魔法とは簡単に言ってしまえば対象を隔離する魔法で。自分を隔離するか、自分以外を隔離するかの違いがある。
で、結界の種類によって使う難易度が変わるらしい。
前世のゲームやアニメに出て来た敵の攻撃を防ぐ壁みたいなのも結界の魔法に含まれ、それは割と簡単な種類らしい。
逆に、今回レーラさんが使った人払いの結界は結構難しい種類になる。
人払いの結界が難しい種類になるのは、「結界があるあっちには何か行きたくないなぁー」って感じで心に作用する魔法だからとか。
心に作用する魔法をきちんと使うのは相当難しいらしく、女の子を魔法で操って薄い本を熱くする事案はまず無理みたい。
まぁ、レーラさんはそんな難しいはずの魔法を理由もなく何となくで使った訳なんだけど…。
「店長、何となくで売り上げを落とすような事をしないで下さいよ」
レーラさんが売り上げとかを全くこだわってないのは知ってるけどさ。
あと、急病で本当に急いで薬が必要になった客が来れなくなるので止めていただきたい。
本当に薬が必要な人には効かないように結界を組んだから大丈夫?そんな細かく結界の設定って出来るのだろうか…まぁ、レーラさんがそう言うならそうなんだろう。
「それで、本当の所はどうして結界魔法を使ったんですか?」
レーラさんはいい加減で適当で面倒なことを後回しすることが大得意な残念美人さんだけど、何となくなんて理由で結界魔法まで使う人ではないはず。
「んー、だから何となくだってー」
まだ言うから、何も言わずに見つめてみる。
「………………」
「……………………」
「……………………………」
「…………………………………」
「………………………………………」
「ヴィル、流石に無言でじぃっと見つめられると照れるんだけどー」
照れるのはこっちも同じだ、この人は中身は残念だけど超がいくつも付く美人を見つめているんだから。
「………………………………………………」
「……………………………………………………」
「はぁ、まぁいいかー。あのね、ヴィルってもうすぐうちを辞めるでしょ?だから辞めちゃう前にのんびり話がしたかったの」
やっと理由を話してくれたけど、店を辞める?何言ってんだこの残念美人??
「いや、店長。僕がいつ店を辞めるなんて言いました?」
そんな話しをしたこともなければ、店を辞めるなんて考えたこともなかったんだけど。
「んー?だってヴィル来月で13歳でしょ。神託の儀をやったら冒険者になるんでしょ?なら、うちの仕事も辞めるんだろうなーって思ったんだけど」
違うの?って可愛らしく首を傾けられた。
「13歳にならないと冒険者登録は出来ないので、神託の儀を受けたら冒険者登録はするつもりでしたけど。駆け出しの冒険者の稼ぎじゃ孤児院を出て独り立ちとか無理ですし、ある程度資金が溜まるまでは冒険者をしながら店も続ける気だったんですが」
ちなみに、神託の儀とは前世で言う成人式みたいな感じの儀式。
この世界の成人年齢は15歳って国がほとんどなんだけど、「0歳から12歳までは子供だったから神様が見守ってくれたけど13歳になったので自分の力で生きますね」って神様に感謝をする儀式。
神様に感謝をする儀式なのになんで神託って名前なのかというと、ごくまれに神様から「君は素質があるからもうちょっとだけ神が手助けしてあげるよ」って神様からお告げを受けたりするとかしないとか。
「まだちゃんと出来ない薬の調合もありますし、13歳になって冒険者になったからってすぐには辞めたりしませんよ」
俺の言葉に嬉しそうに笑顔を浮かべるレーラさん。
「じゃあ、まだしばらくは私はのんびり出来るのねー」
そっかそっかーって頷いてるけど、自分が楽したいだけだったのかこの残念美人は。
「いや、店長。冒険者としての仕事もしたいので、店に来る日は減ると思いますよ?というか、僕がいなくてもしっかりやって下さいよ」
小さくため息をつく。
「んー、エルフなんだから仕方ないわよ」
「たしかに寿命の長いエルフにはのんびりした方が多いですが、店長はただ楽がしたいだけのぐーたらな怠け者では?」
エルフという種族に謝れ。
「ひーどーいー、ヴィルがいじめるー」
もういちどため息をつく。
まぁ、いいや。この残念美人は放っておこう。
外を見ると日が落ち始め薄暗くなってきていた。
わーわーと騒いでいるレーラさんを横目に片づけをして閉店の作業をしていく。
「………神託の儀か」
まぁ、よくある異世界転生みたいに神様に会って転生させられた訳じゃないから俺には関係ないだろ。
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