第二章
都へ
あの後は大変だった。泣きじゃくる
「なあ、あんたらすごい人達なんだろ?」
「頼む。アイツを取り返してくれ。頼む、天を見捨てないでくれ。……っ俺には何もできないんだ。俺には何の力もないんだ……。あんたらがすごいのは知ってる!だから頼むから力を貸してくれ」
必死に平静を装う声は僅かに震えていた。
私だって、
自分の無力さと、醜さに唇を噛む。年端も行かない子供が目の前でなりふり構わずに助けを求めているのに、私はただ足踏みをするだけ。
「ごめんなさ————」
「いいよ」
意を決して頭を下げようとした私の口を塞ぐと、何でもないように
「僕は手助けしかできない」
真面目な顔の凛に梓雨は一瞬怯むが、それでも強い意志をたたえた瞳で凛を見つめると「それで十分だ」と笑む。
梓雨の答えに、凛は満足そうに微笑み返し、私から離れた。
通じ合う二人を見て胸の浅いところがちくりと痛む。私は宙を助けると即答できなかった。それどころか、断ろうとさえした。
「早速行こうか」
凛は動けずにいる私の手を引いて馬車の方へ歩き出す。梓雨は少し離れて天をおぶさり私たちの後を追う。
「迷惑だった?」
声をかけられて戸惑う。迷惑なんて、そんな事ない。ただ、自分という人間の弱さを突きつけられた気がして不甲斐ないと恥じてるだけ。
「
「……ありがとう」
凛は私を責めてくれない。私の欲しい言葉だけを囁いてくれる。それが苦しいなんて、贅沢だろうか。
馬車に乗り込み、都へと向かう中、二人で頭を寄せ合い眠る梓雨と天が微笑ましい。それに引き換え、私と凛は黙ったままただ揺られていた。言葉を交わすこともなく、狭い馬車の中で、肩を触れることもなく。
——沈黙を破ったのは凛だった。
「雷麗も寝てて良いよ。着いたら起こすから」
「ありがとう」と返すけれど、眠れない。頭の中を巡る言葉が寝かせてくれない。
「大丈夫、宙は無事だよ」
凛の言葉に再び胸が掴まれたように痛んだ。私が考えていたのは自分の事だ。また私は自分の事ばかり。目に溜まる涙が馬車の揺れで落ちてしまわないように、必死に堪える。
「雷麗、もう寝た方がいいよ」
窓の外の夕陽に吸い込まれるように視界が暗くなっていく。凛が私のために力を使ってくれたのだろう。私は悪夢の中へ沈んでいった。
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