世界共通語


〈世界共通語になりうる言語〉

 最初の方にも申しましたが、地球上の言語を解す知的生命体が人間一種のみの現実世界でさえ、これだけの文化と言語があります。対してファンタジー世界では人間以外の知的生命体種族が何種類も存在するでしょうから、ますます言語は多様化していくでしょう。

 そこであると便利なのが世界共通語リングワフランカです。現代社会においては英語が、母語話者と第二言語話者の総数が十五億人ということで最も世界共通語に近しい言語です。私としては、英語がここまで世界規模で使われるのには二つの理由があると思います。一つは①比較的単純な文法、そしてもう一つは②アメリカの強大さ、です。 

 この二つの特徴はあなたのファンタジー世界で世界共通語を作りたいという場合の目安になります。ただ、必ずしもこれらの特徴を兼ね備えている必要はなく、例えばとても難しい文法を持った言語でも、「②強国によって使用を強制」された民衆が増えれば、その分たくさん使われることになり、時代を経るにしたがってどんどん簡素化するでしょう。となれば、①よりは②の方が、世界共通語を作るうえではかなり有力であることがわかります。



 〈世界共通文字〉

 世界共通言語は基本的に音声言語に主軸が置かれていますが、では次に文字言語に主軸をおいた、世界共通文字リングワ・レッテラはどうでしょう。これに関しては私が作った造語なので、現実にあるわけではありませんが、しかし近い文字はあります。それこそが私たちの使っている「漢字」です。数千年もの歴史を持つこの文字は、現在使われている文字の中で唯一といっていいほどの特別な特性を持っています。それが「表意性」、「表語性」です。「川」とあればriver、「人」とあればhumanを示すように、漢字は一文字に付き意味があります、アルファベットやひらがな、カタカナなどにはありませんよね。だからこそ、読みや発音は違えど、漢字を使っている文化圏であれば筆談である程度の意思疎通が取れるのです。

 例えば男。これは日本語では「おとこ」、中国語では「ナン」、韓国語では「ナムジャ」、ベトナム語では「ナム」と、確かに意味は違えど、これらの国は過去、あるいは現在漢字圏ですから、少なくとも一昔前までは筆談による会話は十分成立したことでしょう。


 しかし一方で、世界共通文字には欠点があります。それは「表意性」、「表語性」を持った文字は、どうしてもその総数が多くなりすぎ、記憶の負担となってしまうということです。先ほど例に出した韓国とベトナムは、今や基本的に漢字を使っていません。その理由はいろいろあるにしても、総数が多いことによる負担と、その筆記性能が悪いということは少ならからず要因としてあるに違いありません。しかもファンタジー世界でこの仕組みを使うとなるとある程度独自の文字を決めておかなければなりませんし、あまり現実的ではないかもしれません。あくまで現実の様に、表意性のある文字を使う強国と、それに付随した国々の中で使うというくらいがちょうどいいかと。


 ただ、もし魔法を使用する際に用いる文字が表意文字出会った場合、これは必ず世界中で使用され、またその知識が広まっているでしょうから、魔法文字を世界共通文字とするのもいいでしょう。ただ、魔法文字は恐らく超自然的な意味や神事などの非日常を意味する文字が多いでしょうから、日常生活には不向きでしょうけど……。まあ、どこかが魔法文字を基に、表意性を維持した新たな筆記体系を作成した場合、それが最も共通文字としての素質があるでしょう。この場合、民衆に魔法の極意が知られないようにする工夫が必要ですが。

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