言語ごとの「発音のクセ」を作る
〈概要〉
果たして発音のクセと言ってしまってよろしいのか、かなり疑問なところですが、しかしそういっても他にしっくりくる表現がありませんので、ひとまずはクセと表現しておきます。どういうことかと言いますと、例えばドイツ語やロシア語はなんだか固くてかっこいいイメージで、ハワイ語はおおらか、フランス語は流暢など、それぞれの言語には何かしら聞いた時に感じる印象があるでしょう。ちなみに調べたところ、面白いことに日本語も外国人からはフランス語のように「抑揚が無く暢で流暢で、歌っているみたい」とか、「止めどない」などの印象があるようです。
こうした発音のクセは、主にその言語で用いられる母音や子音の種類、さらには発音規則やアクセントなど、様々な要素が絡み合って生まれています。そこまで考えると少し面倒なので、まずは母音や子音の種類を限定してみると良いでしょう。
〈実例〉
言葉で説明してもいまいちよくわからないと思うので、ここでは次の語群【wonderful/coin/homme/tokai/ Βάκχος(Bákkhos)/ओषधि(oṣadhi)】を、①日本語(ローマ字読み)、②英語、③フランス語、④古代ギリシャ語、⑤サンスクリット語の五つの言語”風”に読んでみることにします。
①日本語:ウォンデフル・コイン・ホッメ・トカイ・バッコス・オサディ
②英語:ワンダフォー・コイン・ホメ・トカイ・バッカス・オサディ
③フランス語:ウォンドゥルフ・コワ・オム・トケ・バコ・オサディ
④古代ギリシャ語:オンデルフル・コイン・ホメ・トカイ・バックォス・オサディー
⑤サンスクリット語:ウォーンデールフル・チョーイン・ホーメー・トーカイ・バッコース・オーシャディー
こんな具合です。一つずつ解説していきましょう。まず①日本語は、子音が二つ続くと促音で読んでしまいます(英語は必ずしもそうではありませんね)。またCとKの音の違いがありません。
②英語は、Uをそもそも「ウ」と発音することがほぼありません。それくらいでしょうかね。
③フランス語から少し独特になってきます。まず語末の子音は読まないので、Bákkhosは「バコ」くらいになります。また語頭のHは発音できませんし、「ai」「oi」の組み合わせはそれぞれ「エ」「オワ」と読みます。CHは「チャチュチョ」ではなく「シャシュショ」と言いますので、チョコレートがショコラになるわけですね。
④古代ギリシャ語は基本的に英語や日本語読みと同じです。ただ、子音「W」がないため、発音しようとしてもできません。また帯気音といって、「Kh」「Ch」など、特定の子音に「H」がつくと少し発音に吐く息の音が入ります。Bákkhosがバックォスに近くなるのはそのためです。
⑤サンスクリット語は特に母音に特徴があります。この言語では常に「E」「O」が長母音なので、wonderfulがウォーンデールフルとなります。ちなみにヨガ(Yoga)もサンスクリット語由来なので、本来の発音はヨーガです。もう一つの特徴は、「C」がそれだけで「チャチュチョ」音であるということです。またサンスクリット語もギリシャ語のように帯気音があります。
以上、実践は終了です。このほかにも中国語やスペイン語、ハワイ語なんかで読んでみるのも面白そうですね。とりあえずどれも同じ語を読んでいるだけなのにここまで違いがあります。言語ごとにクセがあるのだなあと実感していただけましたでしょうか。
〈ファンタジー応用〉
「発音を決めるⅠ-発音の特徴」である程度はお教えしましたが、まず言語に特徴づけたい場合は使用する文字を制限・調整します。さらに今回学んだ「子音を発音しない」とか、「特定の母音は常に長母音」といった特徴を入れ込むと、非常に言語ごとのクセが強くなるでしょう。ほかにもアクセントは高低か、強弱か、特殊な子音の読み方があるかなども要素としてもう知識はあるはずです。
応用ということで、今まではエルフ語、オーガ語なんかを作ってきていますから、今回はサンスクリット語を話していそうなナーガ族の言語を作ってみます。
・ナーガ語の特徴
①使われる母音はā,e,ō ,i
②使われる子音は五つの帯気子音【kh,ch,dh,gh,pha】とその他通常子音l,t,w,z,v,q,y,r
③単語がまとまった意味を持つ場合三語まで結合する(例えば「赤い大きな箱」というように、アルファベット表記の場合でも結合して一つの単語様になる)。
④単語が結合した場合、規則化した音声変化が生じる。
⑤言語形態は屈折語。
といった感じでどうでしょうか。少しそれっぽい短文を作ってみます。
◆その軍隊は白い馬を百頭率いていた。【その:sa,軍隊:ovel,は(助詞):yo,白い:acto,馬:pharan,百匹:qadhi,率いた:zakhoin<zakhe】
Sāōvel yō zākhōin qādhiāctōpharan.
はい、このくらい。今回は以上です。
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